50年目のラブレター 20 決意

「坊ちゃん、そんなに勉強ばかりしていたら
 身体に良くありませんよ・・・」

「夢中になって勉強して、人が入れ変わったようです」
「道明寺家の跡継ぎとして自覚が出て来たのは
 結構な事ですが、根を詰めすぎると身体に毒でございます」

「旦那様と奥様に、坊ちゃんが頑張ってらしゃる事を
 お伝えしないといけませんね」

タマが、ニコニコ笑いながら司に話しかけると

「バン!!!!」夕食を摂りながらタマの話を黙って聞いていた司が
テーブルを叩きつけるように箸を置くと

「あいつらに、余計な事を言うな!」
「言ったらタマでも承知しねぇからな」
物凄い血相でタマを睨みつけると、食事を途中で止めて
食堂を出て行ってしまった

後4日・・・何事もなく終われば、この家ともおさらば出来る
やっと、自由になれるんだ・・・・
それまでは感づかれないようにしなくてはならない
勉強しなければ・・・と思いつつ
疲労と睡魔には勝てず、そのまま寝入ってしまっていた

「いけねぇ・・・寝過ごしたか?」

騒がしい小鳥のさえずりで目が覚めた司は
慌てて、身支度をし、まだ寝静まった邸の台所で
麻袋に米を詰め込み、筆記用具が入った鞄と麻袋を持ち
試験会場へ向かうため邸をでた
つくしは昨日と同時間に表にでて、司が来るのを待っていた

「おはようございます」

「おはよう」

今日も大きな握り飯を作り司に手渡した

「少しですまないが米を持ってきた」
「受け取ってくれなければ、明日から握り飯は要らない」
司の気遣いを嬉しく思い素直に受け取ることにした

「ありがとうございます」
「今日は駅まで見送りに参ります」

「そうか・・・」いつもと変わらない優しい眼差しで
笑みを浮かべる司を見て、合格するのは嬉しいが
離れ離れになることと、戦地へ行くかも知れない不安が
入り交じり心から喜ぶ事が出来ずにいた

「気をつけていってらっしゃい」

「うん・・・頑張って来るから・・・」

つくしに見送られ、試験会場につくと
昨日、握り飯を横取りされた総二郎が声をかけてきた

「おはよう、昨日は、ごちそうさん」

司は、黙りを決め込み、総二郎は、そんな司のことを
気にもかけず一方的に話しかけてくる

「今日は数学だ、お前、自信あるのか?」

「ある」「俺は合格する為に来てるんだよ」

「言ってくれるね、面白い奴だなぁ・・」総二郎は、司を気に入り
司も、コイツとは、長い付き合いになるかも知れないと感じていた
この後、総二郎とは苦楽を共にした戦友として、つくしと同じように
強い絆で結ばれてゆく

======*=======*=======

今のところ、脱落者は出ていないようで
昨日と同じ人数で試験が始まり、合否を待つ間、
木陰の下に腰を下ろし、つくしが持たせてくれた、
握り飯を頬張っていた

「俺も今日は昼飯持参だ!」
そう言うと当たり前のように司の横に座り弁当を食べ出した

「なぁ、道明寺、お前どうして試験受ける気になったんだ?」
総二郎の問いかけに信用できる人物かわからなかった為

「気まぐれだよ・・・」「お前は?」

「俺か?俺の家は茶道の家元で長男が跡継ぎだから
 次男の俺はお役御ってとこかな」

「一応、親は難色示したけど、海軍兵学校に合格すれば、
 親としては、それなりに鼻が高い、まっ、そんなとこだな」

「お前の家は反対しなかったのか?」

「俺に、親はいない・・・」
「育ての親はいるが、生みの親はいない」

幼い頃から、両親との接点もほぼ無く
限りなく他人に近い身内だと言う認識でしかなかった

「すまん、悪いこと聞いたなぁ・・・」

「別に構わねぇよ、ほんとの事だから」

「どうだ、合格しそうか?」

「当たり前だろ、どんなけ勉強して来たと思ってんだ」
「俺には帰る家がないんだ、何が何でも合格しねぇと」

「そうだな・・・」
「必ず行こう、江田島へ!」

「ああ・・・・」

「そろそろ発表だ・・・行くか?」

総二郎に促されて、発表を見に行く

「あった!!!」

「後3日・・・長えよなぁ」

気楽そうに見える総二郎も、家の居心地が悪く
司と同じ思いをしていた
両親は、長男ばかり気にかけ、次男の総二郎には無関心
自分の居場所探しに海軍兵学校を選んだ

「お前とは、上手くやれそうだ、宜しくな!」
総二郎に握手を求められ、自分も同じように感じていた

=====*========*=======

今日も、無事終わった・・・・
帰り道、つくしに報告するため、途中下車し
お下げ髪のつくしを捜す

「お帰りなさい」「どうでしたか?」

「受かってたよ」

「おめでとうございます」

一緒に暮らし、お帰りなさいと出迎え
ただいまと返してくれる、そうなれば、どんなに幸せだろう
つくしは、司をみながら思いを馳せていた

「後3日だ・・・後3日で終わるから」

「はい・・・・」

邸に帰り、疲れきった司の顔を見たタマは
明日こそ、何を考えているのか聞いてみようと思っていた
スポンサーサイト
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • Ranmaru*
  • URL
Re: No title

 ゆうさま

おはようございます
ご無沙汰しておりますm(_ _)m
読んで頂き、ありがとうございます!

私も戦争を知らない世代、終戦記念日に鳴るサイレンの音を聴くと
その時は、何とも言えない気持ちになります
兵学校の卒業生達は強い絆で結ばれていたようで
戦死した同期生の家族を出来る限りの範囲で面倒見たり、未亡人になった戦友の妻と再婚したり
特攻隊で出陣する彼らの心情を書いた物を読むと
二十歳の若者が、こんなことまで思っていたのか、、、と悲しくなりました

同期の桜は、戦争で散っていった戦友達が
また皆で逢えるよう、靖国の桜の木の下なら迷わず集まれるだろうと言う思いの唄です

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • Ranmaru*
  • URL
Re: 切ないけど

HN さま

おはようございます
ブログ開設当初から、拍手コメント頂き、ありがとうございますm(_ _)m

子供の頃母が「はだしのゲン」を読んで見なさいと
全巻揃えて読みました
被爆後の広島の惨状や、当時の暮らしなど絵でわかりやすく描いてあり
こんなこともあったんだ・・・と言う程度の思いしかなかったけど
憲法改正や、戦時中の事を伝える語り部に耳を傾ける人も少なくなってきてるように思います
特攻隊の将来ある若者が、意を決して散っていった捨て身の様は悲しい以外の何者でもないですよね
もっと色んな事が知りたくなりました

同期の桜は、戦死した英霊達が
桜が花咲く頃、また皆で会おうと言う唄だと聞きました

貴様と俺とは 同期の桜
同じ兵学校の 庭に咲く
咲いた花なら 散るのは覚悟
みごと散りましょ 国のため

貴様と俺とは 同期の桜
同じ兵学校の 庭に咲く
血肉分けたる 仲ではないが
なぜか気が合うて 別れられぬ

貴様と俺とは 同期の桜
同じ航空隊の 庭に咲く
仰いだ夕焼け 南の空に
未だ還らぬ 一番機

貴様と俺とは 同期の桜
同じ航空隊の 庭に咲く
あれほど誓った その日も待たず
なぜに死んだか 散ったのか

貴様と俺とは 同期の桜
離れ離れに 散ろうとも
花の都の 靖国神社
春の梢に 咲いて会おう

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • つくち
  • URL
No title

私も行ける時は、靖国にお参りに行かせて頂いております。
大和魂、これからも守り続けて行きたいですね。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • Ranmaru*
  • URL
Re: No title

 瀬奈さま

こんにちは
日航機墜落事故から32年もたつんですね
ご遺族の中には、高齢になられ御巣鷹山に登るのことも
断念される方もいらっしゃると思います
原因は、未だわからず
多くの尊い命が犠牲になりました
ご遺族の皆様の悲しみが、いつの日にか癒えますように

        合掌







😃😃

  • Ranmaru*
  • URL
Re: No title

 つくちさま

こんにちは
参拝されてらっしゃるんですね
私も、いつかお参りさせて頂こうと思っております

  • Ranmaru*
  • URL
Re: No title

  チムチムさま

お疲れさまです
コメント頂き、ありがとうございます
なかなか話が進まなくて、すみません
特攻隊で散った若者のエピソードを読む度、悲しくなります
回天(人間魚雷)も特攻隊と同じで敵めがけて突撃して行きます
上官の命令に嫌でも従わなければならず
どんな思いで・・・・と泣けてきます
明後日は、終戦記念日 英霊達に黙祷を捧げたいと思っております

Leave a Reply