50年目のラブレター 21 決意

「お帰りなさいませ」

何とか三日目の試験も突破し、終着点が見えてきた
疲れきった司は、自室に入るとベッドに倒れ込み
何も考える気力も起きず、うとうと睡魔に誘われ
眠りかけたときに、扉をノックする音で目が覚めた
 

「コンコン」「坊ちゃん、タマです、入っても良いですか?」

「ああ・・」

「入りますよ」

倒れ込んだままでタマの話を聞いていた

「タマは、いつでも坊ちゃんの御方です」
「毎日、朝早くから、どちらへお出かけなんですか?」
「正直に話して下さいまし」

「あと2日待ってくれ・・・そしたら話す」

「タマが悲しむような事はしてませんよね」

司は黙っていた
今まで、自分に愛情をかけ育ててくれたのはタマで
戦地へ行く可能性がある兵学校に行くと言えば悲しむ
この家に二度と戻るつもりがない事を話せば
もう若くはないタマと今生の別れになるかも知れない
タマが自分にそうして来てくれたように
司も、タマの行く末を案じた

つくしと出逢い、恋に落ち、今まで自分が気づかなかった感情や
誰かを愛おしいと思う気持ち、心配させまいと気遣う言葉
守ってやりたい、悲しませたくないとの思いから来る行動
タマは、自分にそれらの思いがあればこそ
真摯に向き合って来てくれたのに、別れが近い今になって
ようやく気がついた
年老いたタマを今度は自分が支え守ってやらねばならないのに
司は、タマが部屋を出て行った後、枕に顔を埋めて泣いた
誰かの事を思い涙を流すなんて・・・滑稽だと思っていたのに
タマの深い愛情を知り、声を殺して泣いた

========*========*======

今日で、試験が全てが終わる
やるだけのことはやってきたんだ・・・
つくしが持たせてくれた、お守りをポケットに入れ
最終日は作文、これがどう評価されるのか?
一番の難関かも知れない
全日程を終了し、後は、電報が届くのを待つだけだ

「道明寺、お疲れさん」

「お疲れさん」総二郎に声をかけられ
初日の出会いは、とんでもない男だと思っていたが
今となっては、5日間共に難関に挑んだ同士のような気持ちに
変わっていっていた

「江田島で再会しよう!」そう言葉をかけあい別れを惜しんだ

この5日、試験は大変だったが毎日つくしと逢えたことが
何より嬉しく、これで一歩前に前進したのだと思えた
いつも通り、帰りは途中下車し、つくしの顔を見て帰路についた

=======*=======*======

「坊ちゃん、お帰りなさいませ」

自分の身を案じてくれているタマにだけは本当の事を話さねば

「タマ、後で俺の部屋に来てくれ」

「わかりました」

15分程して、タマは司の部屋の扉をノックした

「コンコン」「入っていいぞ」

司は正座し、神妙な面持ちで、きっといい話ではないとわかり
タマも司に向き合い正座して座った

「タマ・・・俺は、この家を出ることにした」
「兵学校の試験を受けたんだ」
「合格すれば、江田島の寮に入ることになる」

突然の事で、タマは、驚き

「どうして急に・・・」 

「つくしと一緒になりたい・・・」
「タマは、今まで育てて貰った恩がある・・
 いや、タマは、俺の母親だから・・・黙っていて、すまない」
 
「坊ちゃん、タマを置いて行くのですか?」
その言葉が、堪えた

「すまない・・・」

「兵学校に入ると言うことは・・・」

タマの言葉を遮るように、
「わかってる」「どうなるか、わかってるから」

「わかっててゆくのですか・・・」
「行かせる訳には参りません」
「坊ちゃんは、タマの生き甲斐でございます」
「つくしちゃんとのこと、旦那様と奥様に誠心誠意
 お願い致しますから、行かないでくださいまし」

泣きながら懇願するタマを見て、司は、堪らない気持ちになった

「もう、決めたんだ・・・」
「心配するな、お前の面倒は、俺がちゃんと見てやる」
「だから、わかってくれ」

「兵学校を卒業したら、江田島に呼び寄せてやる
 それまでの辛抱だから待っててくれ」

司は、本当に、タマを呼び寄せ、面倒を見るつもりでいた
こんなことになるなんて、ふたりを引き合わせさえしなければ
若い二人の将来を奪うこともなかったのに
タマは、自分の安易な行動を後悔していた


そして、司の元へ、兵学校の合格を知らせる電報が届いた

「カイヘイゴウカクイイテンスウ」
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  • Ranmaru*
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Re: 楽しく読ませていただいてます

 こんばんは!

教えて頂き、ありがとうございました!

m(_ _)m

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  • Ranmaru*
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Re: No title

 瀬奈さま

こんにちは
昨日は、凌ぎやすい気温でした
でも、我が家のワンコに暑いぞーぉ!エアコンつけやがれだワン!と
催促されて、稼働しておりました

人の寿命は、予め決まっているのか?
そう思う出来事も多々あり
神様だけが本当のことを知っているのかも?
お怪我もなく、良かったです!







😃🌃😃

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