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鍾愛 57

おはようございます
いつも、お越し下さり、ありがとうございます
昨日は、更新します!と言いながら出来ずに
申し訳ございませんでしたm(_ _)m

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「お風呂入ってきて!」

いいムードをぶち壊すのは、こいつの照れだとわかってはいるが
相変わらず、素っ気ない態度で
俺の胸を軽く押すと、スルリとすり抜けていって

「明日は、雨、やむかな?」

振り向きざまに、無邪気な顔をして聞いてくる

「さあーな。お天気お兄さんじゃねぇからわかんねぇ」

鼻にかかった、甘ったるいつくしの声を拾うと
適当に、返していた
ついこの間まで、仕事から帰れば、自分の部屋に直行し
誰とも話すことなどなかったのに
無口だと思ってた俺は、ずいぶん、お喋りだと言うことに
気がついて、自嘲するような笑いを漏していた

「シャワーだけじゃダメだよ
 バスタブにちゃんと浸かんなさい。疲れがとれないから」

「めんどくせぇな」

ネクタイを緩めながら返事をすると
キッチンに立つ、つくしの横顔を見ながら
バスルームに向かった

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ザァァァァァー

これから、片付けなければならない問題が多すぎて
俺自身、どうすればいいのかわからない
あの報告書には、都合の悪い事は書かれていないはずだ
24年の空白に、何があったのか?
つくしの母親は、生きているのか?

ザァァァァァー

「もしもーし。司さぁーん。もうそろそろあがる?」

「ああ」

あいつの呼ぶ声に、ハッとして、シャワーを止める
明日は、みんなを集めるか・・・・
あきらなら、広野の事を知っているかも知れない

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「長風呂だから、倒れてるかと思っちゃった」

「お前より、身体がデカい分、洗う面積が広いんだよ」

「それでも、シャワーの出しっ放しは、よくないからね
 限りある資源なんだから、大切に使って下さい!以上!」

「ハイハイ」

快適な温度に保たれた邸内では
バスから出ると、腰に巻いたバスタオル1枚で
自室をうろついていたが、ここでは、まずかろうと
Tシャツに、スウェットを着て、ダイニングテーブルの席についた

夕食だと、つくしが運んで来たのは、カレーライス

「おまたせぇ。白菜のカレーでーす。この時間から食べると
 ちょっと胃もたれるかもだけど・・・」

「美味そうだな」

「カレーって、食べたことある?」

「ガキの頃、タマがよく作ってた」

「職場の人に教えてもらってさ、作ってみたら
 意外と美味しくって、
 あたしの得意料理のひとつになっちゃった
 口に合うかわかんないけど・・・・」

「いただきます」

「どお?」

一口食べた後、大きな瞳が俺を見つめて、返事を期待している

「美味いよ。上出来だな」

自信なさげに聞いてきた、つくしに、そう言うと
満面の笑みを浮かべている
食事中、楽しそうに、あれこれ話していたが
俺は、殆ど聞いてなかった
つくしの顔を見ながら、亡き叔父の事を
思い出していたからだ

タンポポの綿毛を飛ばした事
一緒に、泥だらけになって遊んだ事
絵本を読み聞かせて貰った事
親父に叱られて、泣きながら飛び込ん行ったのは
いつも、叔父の腕の中だった
優しく抱きしめてくれたぬくもりを、今も忘れてはいない

24年の月日が流れ、
叔父が亡くなった年齢と同じ27歳になった俺の前に
叔父が愛した人の娘があらわれた
成就しなかった恋。叶わなかった恋をやり直すかのように
俺達は、出逢ってしまった

「ねぇ、聞いてる?来週から仕事行くからね」

「はぁ?まだ、そんな事言ってんのか?
 こないだ、プロポーズしたはずだけどな」

「・・・・・・・」

「俺んとこに、永久就職しろって言っただろ」

「本気なの?」

「冗談で、こんな事言えるか!」

「あたし達、出逢ったばっかだよ
 お互いのこと、まだ、何も知らないし、
 最低、1年は、付き合ってみないと・・・」

「仕事は辞めてくれないか・・・
 俺も忙しい、お前に、家にいてもらうだけで、
 癒しになる・・ダメか・・・」

「あたし、なんも出来ないよ・・・それでもいいの?」

ぽっと、頬を染め、はにかむような恥じらいの表情を見せると
俺の目をじっと見つめてきた

「傍に居てくれるだけでいい」

「ありがと・・・
 でも、中途半端は、嫌だから、引き継ぎして
 仕事を片付けてから辞めさせて」

「考えとく」

家で軟禁状態に、するわけにはいかないが
仕事を続けるとなると、事情が違ってくる
俺の考え過ぎなのかも知れないが、万が一の事もあり得る
つくしが言うように、入籍する事は簡単だが
それによって、雁字搦めにしてしまうかも知れない
逃げ場は作っておいてやらなければ、ただでさえ厄介な
お荷物を背負い込んでいる俺のほうなんだ

「ごちそうさん。今夜は、もう遅い
 仕事の話は、また今度にしょう」

「そうだね」

「先に寝ろ。俺はまだ、仕事が残ってっから」

「もう少し起きとく」

「俺に気を使ってんなら寝てくれた方がいい
 起きてられる方が、気になっちまう」

つくしは、無言で、テーブルの上を片づけると
キッチンに消えていった
邸に比べると、狭い部屋は、、互いの存在を感じられる
カチャカチャと片付けをする音
パタパタとスリッパで、歩く音
女と一緒に暮らすなんて、面倒だと思っていたのに
今は、その面倒な事が、楽しかったりする
姉貴とタマが見たら、鼻で笑われそうだ

「コーヒー飲むでしょう」

キッチンから聞こえた、大きな声は、邪魔にならなかった
こんな暮らしも悪くない。今は、そう思える

「ここに置いとくね。明日は、何時に起こしたらいい?」

「7時くらいかな」

「わかった。おやすみ」

寂しげに目を伏せた、その顔に、
いてもたってもいられなくなって
お前が眠るまで、添い寝してやると言ったら、
つくしは、素直に頷いていた

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