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鍾愛 59


一緒に潜り込んだベッドのサイドランプが
程よいオレンジ色の明かりを灯している

これと言った会話もなく、いい年をした、男と女が
ハニカミ合い、身体の一部が触れることさえ戸惑っていた
恋人同士だと言うのに、思春期の初恋のような
もどかしさに、胸の鼓動の高鳴りが、
身体の隅々まで響き渡って行くのがわかる
俺は、つくしの大きな瞳を見つめながら
足裏で、細い脚をゆっくりとなぞりあげると、
左手の指先をぎゅっと握りしめてきた
その手が離れていかないように、親指の腹で、
つくしの手の甲の端を擦り
僅かに出来た、首元の隙間に右手を入れる
軽いな・・・片手で持ち上がってしまう小さな身体を抱き寄せ
気後れする、つくしの唇、頬、鼻先、額に
リトルキスを繰り返す
恋愛小説さながらの甘いロマンティックなキャンディーが
心の中でとけて、心情が揺さぶられた

柔らかな唇をゆっくり離すと、着古したパジャマから覗いた
鎖骨のくぼみがエロティックで、
ひとつずつボタンを外していった
3つ目のボタンに指をかけた瞬間、
つくしが、俺の手に触れてきた。顔を上げると、
憂いを帯びた瞳がナイトランプに照らされ
今にも泣きそうな顔になっている
急ぎすぎたか・・・・

身体を離し、なだめるように髪を撫でてやると
つくしは、左右に首を振った
俺達に、会話なんて必要ない
研ぎ澄まされた空間に、寧ろ会話は邪魔になるように思え
アイコンタクトとでも言うのか。
大きな瞳は、俺を受け入れてくれると言っている
つくしが、ゆっくり目を閉じて、
か細い腕を背中に回し、俺の髪を優しく撫でてくれた

小さな身体を壊してしまわないように、覆い被さると
舌を絡め合う濃厚なフレンチキスを幾度も繰り返し
時間をかけて、脱がせてゆく
ひと肌が、こんなにも温かいなんて・・俺は初めて知った

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「おはよー!起きて!遅刻するよ」

いつの間に眠っていたのだろう・・・
つくしの元気な声と共に、ベッドルームの
カーテンが、勢いよく開け放たれ、射し込む春の朝日は、
眩しさよりも、ふんわりと優しかった

「起きてもいいのか?」

らしくない甘い夜に照れもあって不機嫌に答えたら

「良いに決まってるっしょ!」つっけんどんに返してきた

「よぉーし!」

ガバっ

「うっ・・・まっぱ・・・」

「言ったろ?起きて良いのかって」

「あ、朝ごはん出来てるから・・・・」

バタン

「チッ。おはよーのチューも無しか」

司は、ベッドから手を伸ばして、
脱ぎ捨てたTシャツを頭からかぶると立ち上がり
スウェットをはいた。チラリと見た視線の先に飛び込んで来たのは
所々、たぐり寄せられたシーツの波間
そこまで激しかったか?と、思い出して鼻を掻く

カチャ

「何で、いんだよ」

「何でって、見たらわかるでしょ?
 お腹空いたから朝ごはん食べに来た」

ダイニングテーブルに座る類が、紙切れをヒラヒラさせながら
嬉しそうに笑っている

「なんだ、そりゃ?」

「ああ、これ?つくし食堂のお食事券1年分
 昨日、一緒に作ったんだ!」

「ねぇーっ」

「同時に言うんじゃねぇよ!」

つくしと類が、顔を見ながら声を重ねた
類が来てくれたお陰で助かった
ふたりきりは、やっぱり何だか照れくさい

「今夜のこと聞いてっか?」

三人で、朝食を摂りながら、
司は、飲み会の話しを持ち出していた

「仕事のお付き合い?」

「こないだ類の部屋に来てた連中と飲み会すんだよ
 お前も一緒にな!紹介したい女どももいるし」

「そう言えば、なんか来てたな」

「ちゃんと、確認しろよ!
 でよぉ・・・こいつを一緒に連れて来てくれ」

「ハイハイ」

妙なシチュエーションで、朝メシを食べ終えると
出勤するために慌ただしく支度をする
何だかんだと、つくしは、俺の世話を焼いてくれ
これ持ってって!と
玄関先で渡された紙袋の中身は弁当だった

「いってらっしゃい」の声に見送られ部屋を出た

マンションの入口には、すでに迎えの車が停まっていて
グッドタイミングで、姉ちゃんから電話がかかってきた
出なければ、しつこくコールされるのはわかっている
仕方なく、スマホをタップした

「もしもし、司!大丈夫?」

「今のところはな」

「驚いたわ・・・つくしちゃんが、望叔父様の娘だったなんて」

「あの三人、怒り狂ってただろ?」

「特に、お祖父様がね。どうする気?」

「考え中だ」

「あの後、西田さんが呼ばれて、司の事を監視しろと
 お父様達に言われてさ、何て言ったと思う?
 自分の直々の上司は、司だから、あんた以外の指示は
 受け入れられないって、突っぱねて、カッコ良かったわ
 西田さんの事、見直しちゃった。 
 司・・・西田さんの事も、守ってあげてね」

「わかってるよ。姉ちゃんが心配ないするような事には
 なんねえから」

「安心した」

西田がクビになることはないだろう
道明寺の心臓部をつぶさに見てきた男だ
簡単には、葬れないはずだ
何より、あの男に代わる参謀などいないのだから
ババァ付の秘書、山崎も敵わぬ相手が西田なのに
何度、道明寺財閥の窮地を救って来たことか?
それを、親父達もわかっている
一番、手強い相手は、西田だろうな・・
それにしても、言ってくれるよな・・・
俺は、最強の軍師西田と組んで、道明寺財閥を乗っ取るのさ
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