FC2ブログ

鍾愛 61

西田が出て行った後、司は、放心状態で、
ぼんやりと、ソファーに坐ったままだった
虚しさ、悔しさ、怒り。考えないようにしようとしても
誰も居ない、静かすぎる部屋は、邪魔が入らない分、
混沌とした感情を抑える事が出来なかった
こんな事で動揺していては、先が思いやられる
自分自身に、気合いを入れるため、手のひらで軽く頬を叩いてから
立ち上がっていた

ブゥーブゥーブゥーブゥー

マナーモードにしたままのスマホがスーツのポケットで
音をたてている。感傷に浸っている暇はない
今日一日、スケジュールは、ぎっしり詰まっているのだ
短くため息をつき、ポケットに手を入れ取り出した
着信画面は「つくし」の表示
花沢類とお花見ちゅーと画像添付されたメールは
大半が散ってしまった桜の木の下で
Vサインを作り満面の笑みを浮かべた写真だった
花見もくそもねぇだろうと呆れつつ、
笑顔のつくしを保存する事は忘れなかった

「あんまり、はしゃぎすぎるなよ」と短い返事を返してから
脱いだスーツの上着をハンガーにかけ、デスクに落ち着いた
午前中の仕事は、企画書や、現在携わっているプロジェクトの
経過報告書に目を通すことから始まり、場合によっては
自ら現地に足を運んで視察をする

司の仕事の仕方は、まず、頭の中で、するべき事を
パズルのように組み立てて、デッドスペースがないか確認し
僅かな隙間も無駄には出来ないと、視覚で情報を得て
脳内で処理をした後、それらのデータを元に思考力を駆使して
行動を起こしている
冷たく感じられる所以は、脳内のデータベースを軸にしているため
人としての温度が伝わって来ないからだった
そんな司も、ここ数年、少しずつ考え方が変わってきていて
今のようなやり方では、生き残れない時代が必ず来る
ワンマン経営は、それなりの統率力もはかれるが、屋台骨が揺るげば
簡単に崩れ去る。必要なのは、それを支える有能な人材と
失敗を恐れない自由な発想
マンパワーなくして、未来はあり得ないと思うようになっていた
亡き叔父、望が、やろうとしてたこと
西田が言った、夢を追いかけましょうとは、まさにこの事だった

「俺には、まだまだ経験が足りない」

ペラペラと企画書に目を通しながら、時間を確認すると
すでに、11時になっていた
早めに仕事を片付けなければ、自分が声をかけた
飲み会の参加も危ぶまれる
書類を整理しながら、1通の招待状に目がとまった
各経済誌が投票し、注目する企業に贈る賞の授与式だった
パーティーの招待状など、開かなくとも
差出人の名前を見ただけで目的がわかってしまい
興醒めするのに、なぜが、封を開けて見たくなった

「エコノミー大賞ってか・・・まんまじゃねぇか」

司は、若い経営者として手腕を奮い、注目すべき人物だと言う
理由で、昨年に続き、2年連続でシャイニング賞に選ばれた
興味も、ありがたみもないと代役を立てて出席していなかったが
情報収集も兼ねて、今年は、顔を出してみるのも良いかも知れないと
招待状をデスクの引き出しに入れ、仕事を続けていた
目指すは飲み会!集中していたら、また邪魔が入る
社員食堂のシェフから、「お昼は、いかがなさいますか?」と
お伺いをたてる、内線電話がかかってきた

「今日は、いらねぇ」

お昼は、つくしが作ってくれた、愛カノ弁当がある
持たせてくれた、紙袋を見ながら
昨日の夜の事を思い出しては、ひとり、ニャニャ笑いが溢れていた
あいつ、結構、可愛いのにバージンだったんだ
清く責任を取って結婚しねぇと!
結婚なんてするものか!と、息巻いてた男が、この変わり様
あっ!類と一緒に居るつってたな!弁当を見て、思い出す

RRRRRRRR RRRRRRR RRRRRR

「クソッ!でやがらねぇ!あの女、告知浮気かよ!
 オレ様を怒らせた罰だ!今夜は、たっぷりお仕置きしてやる!」

RRRRRR RRRRRRR RRRRRRRR

コンコン

「入れ」

シェフの内線電話を切った後、西田を呼びだしていた事も忘れ
司は、つくしと連絡が取れない事に、苛立っていた

「なにしてやがんだ!」

「お呼びなられたので参りました」

「お前に言ってんじゃねぇ!」

「はぁ?」

「西田、女は、好きな男が居ても、顔だけが良い男に
 言い寄られたら浮気すんのか?」

「はぁ?」

「はぁじゃねぇ!答えろ!」

「魔が差すこともあるかも知れませんね」

「お前よぉ、馬鹿正直に答えんじゃねぇよ!」

フッフッフッ・・・

子供みたいな司のもの言いに、西田は、可笑しくなって
思わず、笑ってしまった

「あの女、俺にバージンを捧げておきながら
 類と浮気してやがる!」

「浮気?」

「類と花見に出かけて、電話にでねぇ」

「気がつかれてないだけだと思います
 そのうちかかって参ります」

「アホ抜かせ!どれだけ時間がたってると思ってんだ
 10分も放置してやがんだぞ!」

たった、10分で・・・浮気認定されるつくしも気の毒だが
司が、これほど嫉妬深いとは思いもよらず
何に対しても、物怖じしない男が、恋をすると
ここまで自信が無くなるものなのか?
尋常でない、あわてふためきぶりに、GPSという手もありますと
言わずにはおられなかった
西田のアドバイスの途中で、待ちわびてたスマホが鳴る

RR

2度目のコールで、食らいつく

「もしもし・・・電話くれた?お弁当、残したらダメだよ
 今ね、あたし達も、お昼食べてんの!」

「誰と」

「誰って、花沢類しかいないでしょ?」

「お前と言う女は・・・不義密通は重罪だぞ!」

「何それ?」

「肉じゃがは、傷みやすいから、時間たったら
 食べちゃダメだよ。それから、卵焼きは、ダシをきかせた
 自信作だから、残さず食べてね!」

伝え漏れてくる、つくしの声、まるでチグハグな会話に
司は、タジタジになっている

さすが、望さまのお嬢さま・・・いいコンビだ
つくしなら、司の手綱を引いて、やり込めてくれる
ピッタリの相手だと、ふたりのやりとりに西田は、頬を緩めていた


==========

HNさま

おはようございます
先日は、お悔やみの言葉を頂戴して、ありがとうございましたm(_ _)m

みぞれ!さぶっ
来世は、ハワイで・・・いいなぁ
メイドとして、雇って下さい!
司様のお世話を一手に引き受けます!
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply