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鍾愛 62

飲み会は、司が憩いの場として作った、郊外にある
フレンチレストランで行われることになっていた
メンバーは、幼馴染み三人と、元婚約者の滋に
高校時代の後輩桜子にも声をかけた
滋と桜子を呼んだのは、司が唯一、信頼してる女友達で
なにかあった時、つくしの力になってくれると考えていたからだった
司が、手配した、リムジンの車内は、久々に顔を合わせた
お馴染みのメンバーで盛り上がっていた

「司にしちゃー、ずいぶん、気を使ってんじゃね?」
総二郎が、みんなに同意を求めるように聞いてきた

「確かに。送迎つきとはな・・・」
あきらが、苦笑いしながら返事をする

「このリムジン、久しぶりに見たわ。
 最近、使ってなかったでしょう?」

滋が、シートで飛び跳ねてはしゃいでいる

「私が、どうしてって聞いたら、今時、リムジンなんてなんて
 ダセぇだろ?結婚式かイベントでしか使ってる奴なんていねぇーよ
 って、言ってました」

桜子の言葉に、同意して頷く

「今のお気に入りはメルセデスだもんな
 その前は、ビンテージのアメ車。あのリンカーン、狙ってたのに
 類に譲るなんて、どう言う風の吹き回しだ?」

総二郎が興奮しながら悔しそうな顔をする

「そう言えば、類くんは?」

滋が、思い出したように聞いてきた

「司のフィアンセと一緒に来るらしいぜ」

「フィアンセぇぇぇぇぇ!」

あきらの言葉に、女ふたりが驚きの声をあげる

「なんだ、お前ら、知らなかったのか?
 司くんは、今、あわーーーい恋に夢中なのさ」

ふたりの反応を楽しむように、総二郎が視線を移してきた

「信じられない・・・あの司が・・・恋してんの?
 もしかして、あの女、椎名みずき?」

「まさか、みずきは、司が一番嫌いなタイプだろ?」

あきらの言葉に、ホッとする滋と桜子が面白い

「どこのお嬢さまですの?」

桜子が嫉妬心を覗かせて聞いてきた

「お嬢さまじゃーないらしぃぜぇ」

「よく、あのおっかないおば様が許したよね」

「許してないから、こーして俺らが呼ばれてるんじゃないか」

高校時代、無理やり婚約させられた滋が、楓と一番接点がある
その楓が簡単に、結婚を許すとは思えず、あきらと、総二郎の話に
納得していた

「滋!総二郎!お前ら、司の彼女に、余計なこと言うなよ!
 ぶっ殺されんぞぉ」

「言う訳ねぇーだろ・・・」

あきらが釘を刺すと、総二郎がムッとして答えた

なんだかんだ言いながらも、このメンバーの絆は固い
司を中心に、ビジネスもプライベートも、互いが窮地に陥れば
手を貸し、難を乗り越えてきた
特に、司の力は絶大で、繋がりがあると言うだけで
あきらは、ビジネスにおいて信頼を得てきたほどだった
高校時代、あれ程荒れ狂っていたのに、今の司は
ビジネスマンとして、確固たる地位を着実に築いている
そんな彼に、近づき、願わくば妻の座をと狙っている
女狐達は、掃いて捨てるほどいるのだ
司が選んだ人は、お嬢さまでも、
人が羨むような美を兼ね備えている訳でもなかった
あきらは、司の持つ目が確かだと知っている
そんな彼が、結婚まで考えているのだから、つくしもまた
凄い女なのだろうと思っていた

リムジンは、ようやく目的地に到着し
支配人が、入口前で、みなを出迎え案内する
立地条件が悪いにも関わらず、店内は、相変わらず賑わっている
この土地の売買を仲介したのは、あきらだ
フレンチレストランをオープンすると聞いたときは
道楽にしては、金がかかりすぎると思っていたが
赤字にして、税金対策にでもするのだろうと思っていたら
ちゃっかり、繁盛店にしていた。司には、先賢の目がある
彼を怒らせれば、一溜まりもない事くらいわかっている
友人であることを神に感謝したいくらいだと、
賑わう店内を横目で見ながら通り過ぎていた

「よーーお!お疲れさん!」

右手をあげて、にこやかに出迎えたのは、
すでに到着していた噂の男、司だった

「ゲッ!どうしちゃったの?司ったら、しばらくみないうちに
 良い男になっちゃって!」

「ほんと・・いい男が、更にグレードアップしてます!」
 
滋と桜子が驚くのも無理はない
程よく毒気が抜けて、顔付きが変わっているのだ
爽やかさを醸し出しつつ、ただものではないオーラも纏っている
総二郎や、あきらでさえ、司の変貌ぶりには
目を見張っていたのだから、久しぶりに会う
滋と桜子が、面食らうのも当然だ
恋をして、ここまで変わるとは、総二郎もあきらも
想定外だった

「遠いとこ呼びだして悪かったなぁ」

「類とつくしちゃん、まだ来てないの?」

総二郎の言葉に、一瞬、キッとした表情を見せた司を
みんなは、見逃してはなかった
変わったとは言え、司は司だと笑いが込み上げてきた

「あの女、類と遊び過ぎて遅れるってよ」

「はぁ?なんだそれ?」

「類と花見に行ってよぉ、日が暮れるまで遊んでたらしい」

「ガキかよ?」

司と総二郎のやり取りに、滋と桜子は
目をパチクリさせながら聞き入っている

「ちょっと変わった子?」

「日が暮れるまで外で遊びませんよね・・・」

こそこそと、滋と桜子が耳打ちする

食前酒でも飲んで待っていようと
あきらが、場の空気を変えたのは、司の機嫌が悪いからだ
飲み始めて、30分程過ぎたあたりで、
個室の外が騒がしくなったと思えばノックする音が聞こえてきた


「失礼致します。お見えになりました」

支配人がドアを開け、類とつくしが入ってきた
その姿に、一同、あんぐり口を開けて見入っていた
フレンチと言うこともあり、それなりに、お洒落したメンバーと
デニムに、パーカー姿の類とつくし
それよりも、ふたりの姿が泥だらけな事に驚いていた
ただ事ではない様子に、司の目が怒りに満ちている

「類!お前がついてて、何でこんなことになってんだ
 何があったんだよ!」

「バッタ探してたら、夢中になって
 川原のぬかるみ歩いてたりしてたからさ・・・汚れちまった」

司の問いに、類が申し訳なさそうに答えると

「ごめん・・・着がえる時間なかった」

つくしも、シュンとして、謝ってきた

「ガハァハァハァ」

「いいじゃねぇーか。そう、カッカしなさんな」

あきらがなだめても、司の機嫌は収まらない

「つくしちゃん、そう言うときは、司に、チューして
 ごめんねって言えば許してもらえるから試しに、やってごらん」

総二郎は、冗談で言ったつもりなのに素直なつくしは
司に近付くと、背伸びして、頬に唇を乗せた

「ヒュー!」

「やってくれるねぇー」

「ワァーオ!」

「ヤダーーー」

可愛らしいラブシーンに、やんやの喝采が起こっている
司も、単純。まさか、つくしが人前でキスしてくれるなど
思ってもみなかっただけに、怒りより、つくしの愛らしさに
骨抜きにされ、照れもあって、素っ気ない態度を取っていた

「今回だけは、許してやる!次はないと思え!」

司が、怒ったのは、遅刻したことでも、泥だらけで
遊んでいたことでもない。両親の指図で
危険な目にあったのではないかと心配したからだった
まさか、バッタと戯れて泥だらけになるなんて・・ 
呆れながらも、ホッと胸を撫で下ろす

つくしと、初めて会う滋は、面白そうな子だと歓迎していたのに
桜子の心中は穏やかではない
長年、司に片想いしてきたのに、連れてきたのは平凡な女
これなら、相手がみずきの方が諦めがつく
バッタと遊んでたなんて、わざとらしいぶりっ子だわ
気に入らない。苛めてやりたくなっていた

「それにしても、見事に汚い!」

「殿様バッタを見つけようと思ってさ
 草むらの奥へ奥へ入っちゃんだ」

さすがのあきらも、類とつくしの遊びにはついて行けないと
茶化すように言えば、真面目な顔で類が返してきた
司は、支配人が持ってきた濡れたタオルで
つくしの手や顔を拭いてやっている

「初めまして、私は、道明寺さんの高校時代の後輩で
 三条桜子と申します
 こちらは、道明寺さんの元婚約者。大河原滋さん
 宜しくお願い致します」

見ていられない・・・デレデレといちゃつく司とつくしに
桜子の意地悪心が、疼いていた

「おい、桜子・・・」

「何ですか?なんか悪いことでも言いましたか?」

場の空気を乱すなと言わんばかりに、
総二郎が眉間に皺を寄せて釘を刺す

「婚約者って言ったって、親が勝手に決めた事だから
 気にしないでね」

滋がすかさずフォローを入れるが、つくしの顔色が一瞬変わったのを
まわりは、見逃してはいなかった
言った桜子は、涼しい顔して、食前酒を飲んでいる

「初めまして!牧野つくしです。宜しくお願いします」

「つくしって呼んでもいい?」

滋が身を乗り出して、握手を求めてきた

「はい」

「牧野さんって、おいくつ?」

桜子は、嫉妬心をあらわにしなが聞いてきた

「26です」

「私より、一つ年寄りですね。なら、先輩って呼ばせて頂きますわ」

年寄りって言い方はないだろうと思いつつ、みんなは黙っていたが
桜子の挑発に、つくしが乗らなかった事だけでも大物だと関心していた
普通の女なら、これ見よがしに
司の女だと盛大にアピールしていただろう
何とも言えない雰囲気の中、食事が始まろうとしていた
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