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鍾愛 63

12畳ほどの司専用の個室で食事会始まる
掘り炬燵の上座に、司とつくしが並んで坐り、その横に類
向かい側に、総二郎、あきら、滋、桜子が腰を落ち着けた
酒に強い男たちはアルコール度数のやや高いドライシェリーを
食前酒に選び、滋と桜子は、ワインベースのカクテル、
ペリーニをチョイスする。つくしは、この店に初めて訪れた時と同じ
思い出のミモザを注文した

「それでは、皆さん揃ったところで、せんえつながら
 わたくし美作が、乾杯の音頭を取らせて頂きます」

あきらの声で、7人同時にグラスを手にする

「司とつくしちゃんの婚約を祝して、かんぱーーーい!」

「かんぱーーーい!」

「私は、認めてませんけど・・・」

桜子がプイッと顔を横に向け小声で呟く

「可愛いねぇ」

運ばれてきたアミューズに、話題が移るよう
滋が気を利かせて、オーバーアクションではしゃいで見せた
動物性たんぱくが苦手な類のため、春野菜をふんだんに使った
アミューズは、シンプルな白い皿に盛りつけられ
色鮮やかで、センスがいい

「ほんと、素敵!」

つくしも、目を輝かせ、斜め後方に坐る滋に顔を向けた後
このカトラリーであってるよね?と言葉ではなく、
視線で、司に聞いてきた
大丈夫だと司が、にっこり笑みを浮かべながら頷く

「熱っつぅぅぅ。この部屋の温度10度は上がったんじゃねぇ?」

総二郎が、ふたりのやり取りを見てパタパタと手で扇ぐ

「でぇ?司の一目惚れってやつか?」

飲みかけのドライシェリーをスマートに
唇に移したあきらが、恋に落ちたきっかけを聞きたくて
うずうずしている

「そんな事、聞いてどうすんだよぉ」

「そりゃー、ここに居るみんな聞きたいって
 お前、俺の3回ルールを真似て、それ以上、
 女と会わなかったじゃん」

「ううん・・・」

余計なこと言うな!と、司が、わざとらしく咳払いをした
ペラペラと面白半分で、過去の女のことを
つくしにバラれたらたまったもんじゃない

「猫だよ・・・こいつが、野良猫の飼い主探してたんだ
 そこへ、たまたま俺が出くわした。それだけだ」

いつもより、低いトーンで、ボソボソと話す

「ショートカットしすぎな馴れ初めだよね
 そこまでのプロセスに、興味あるのに」

滋も、なかなか食い下がらない
司も、話したいことが山ほどあるが、つくしが居る手前
複雑な事情までは、言えなかった

「野暮な事、聞いてどおすんの?・・・
 司見てたらわかるでしょ?」

今まで、黙ってた類が、一気に、完結させてしまった

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コース料理は、アミューズに始まり、デザートのデセールが
運ばれてくるタイミングで、個室のドアがノックされた

「失礼致します。ご用意が出来ました」

「つくし、滋、桜子、庭に出て来いよ。夜空が奇麗だぞ」

幼馴染みに事情を話すため、デザートまで来たら
つくし達を外に連れだして欲しいと支配人に頼んでおいた
司は、桜子の嫌味が気になったが、滋がついているから
大丈夫だろうと、行って来いと促していた

「親睦を深める為に、丁度いいですわ・・・」

桜子が、にっこり微笑む

「女子会だね!」

勘の良い滋は、何か思惑があって司が、そう言ってるのだろうと
察して立ち上がると薄手のショールを羽織って待っている

司は、汚れた、つくしのパーカーを脱がせると
自分が着ていたスーツの上着を、肩にかけ
襟足に入りこんだ長い髪を整えてやり、優しく頭を撫でている
暖かくなったとは言え、郊外にある庭は、まだ肌寒い
不格好でも、風邪をひかせるよりはましだ
遊びでも、連れて歩く女の身なりにうるさかった司が
化粧っけもなく、見るからにお高く無さそうなパーカーを
着ていても、気に止めない。おまけに、蕩けそうなあまい顔で
ひと目もはばからず、つくしの髪を撫でている姿に
総二郎とあきらも、目を丸くした

「俺達も、後から行く。先に行ってろ」

「つくし、行こ!」

滋が、コートのような大きな上着の裾を引っ張っていた

「ご案内致します」

支配人のエスコートで、女たちは部屋を出て行ったのを
見計らって、あきらが聞いてきた

「式は挙げずに入籍だけするつもりか?」

「色々あってな・・・どうしていいか、わかんねぇんだ」

初めて聞いた、司の弱音に本気さが伺えた

「あいつに初めて会ったとき、声をかけずにはいられなかった
 何だかわかんねぇーけど、磁石みたいに吸い寄せられて
 健気でよぉ・・・折れそうな細い身体して、一生懸命でさ
 負けん気が強い癖に、壊れちまいそうで・・」

「気になったんだ?」

類がしみじみと呟く

「親父とハバァには、道明寺財閥から手を引いて貰うつもりだ」

「マジか?みずきは、お前の婚約者気取りだぜぇ」

「みずきは、大手製薬会社のお嬢様。そら、お前の両親も
 押し付けたくなるわな・・・」

部屋の空気が変わり、幼馴染み達も真剣に聴き入っている

「実はな・・・・俺とつくしは、いとこ同士なんだ」

庭で、デザートを食べる、つくしを目で追いながら
司が言った

「はぁ?」

司の口から、思っても見なかった言葉が漏れて驚きを隠せなかった

「亡くなった、叔父の娘なんだよ。俺も知らなかったけどな」

「って、事は、あの子、道明寺の血を引いてるのか?」

「そう言うとこになる」

ワイングラスに残っていた赤ワインを一気に飲み干した司は、
幼馴染みの顔をぐるりと見渡しながら言う。彼らも、庭に居る
つくしへと視線を移していた

「あきら、広野新一って、投資コンサルタント聞いたことあるか?」

「いいや、知らねぇな。その男がどうした?」

「ちょっとな・・・・」

「探ってくれないか?」

「そりゃ、構わねぇけど、偽名かも知れんぞ」

「道明寺帝国を崩壊させんの?」

「いいや、潰す訳には行かねぇ。あくまでも手を引いて貰うだけだ」

「どてっ腹に、鉛の弾ぶち込まれて、それでも
 意気揚々としてる、親父さんって、経済界のアル・カポネでも
 目指してんのか?」

あきらの言葉が父、誠が悪事の限りを尽くした事を
要約している
傘下の系列グループは、骨の髄までしゃぶり
乗っ取りを重ねて手に入れてきた
なのに、道明寺財閥は、乗っ取られないよう、株式は非公開
ファミリーで、株を分配している

「ファンドを立ち上げて、系列グループの大株主に俺がなる」

「若葉会を再開するってのは、資金の調達の為に?」

「そんなとこだ」

「水面下で、それをやるには、無理がある」

美作グループは、主に、不動産業を生業にしている
海千山千の古狸達にも顔が利く
あきらも、司に負けず劣らずの度胸と人脈、人を見極める目を
持っている

「だから、広野新一に、動いてもらうんだよ」

「つくしちゃんを巻き込む事だけは、やめろよ」

歯止めが利かなくなるまで、遣り合うような事はするなと
類が、珍しく感情的になっている

「わかってる・・・・」

「そこまでして、一緒になりてぇーって一大決心だな」

総二郎も、これまでと違う、司の様子が気になっていた

庭では、ギャルソンが、つくし達に、お茶を運んできていた

「司様の本命は、やっぱり、あの子だったんだ」

庭に居るつくしが、店内から見守る、司に、手を振って来た
司が、ニコリと笑って大きな右手を顔の辺りまで挙げて答えている
どこにでもいるような平凡な女を司が選んだ事が
意外に思えて、ギャルソンは、気づかれないように
目をスライドさせて、様子を伺っている
優しく笑う司にお目にかかったのは、
つくしと初めて来店した時以外、見たことがない

「やな、女・・・・」桜子の嫉妬心は、メラメラ燃えていた
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