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鍾愛 64

「こちらでございます」

支配人が案内してくれたのは、天然木で造られたたテラス席
外でも、食事を楽しみたいと言う客の声に応えて増設した
庭の芝生は、冬枯を防ぐため暖地型芝の上から
寒地型芝の種をまき、隅々まで手入れが行き届いている
絶妙のライティングと、月明かり。
北の方角を見れば北斗七星が見つけられる
北極星、こぐま座、乙女座・・
派手なネオンサイに邪魔されない夜空は、
贅沢な、自然のプラネタリウムだ

「素敵なテラスだねぇ」

木目を活かしたお洒落なテーブルと椅子に腰掛けた
女子3人の目の前に運ばれて来たアッサムティーは
芳醇な香りを漂わせ、さっきまで鼻腔をついていた
芝の青臭い匂いをかき消していた

ティーカップに、たっぷりとミルクを注ぎ入れた滋が
カップの耳を指で摘まんで口に運ぶ
さすが、お嬢様。カップの耳に指を入れてはいけない事を
知ってるんだ・・・
司と出逢った頃、お茶の飲み方も知らないのか!と
ビシバシとやられたことをつくしは、思い出していた

「ねぇ、司って、どんな感じ?」

「どんなって?」

滋が言っている意味がわからないつくしが聞き返してきた

「好きとか、愛してるーぅとか言ったりするの?」

「あー。言われたっけ?覚えてない。すぐ怒るし、おっかなくって」

本当は、優しい司の事を惚気たいけれど、
元婚約者の滋に言えない、嫉妬心をむき出しにしてる桜子は
相変わらず、不機嫌そうだ
つくしは、わざと、話をはぐらかして、ふたりの反応をみていた

「やっぱしぃーーーわかるわー!それ!」

滋は、女のつくしが見ても魅力的なのに
どうして、別れちゃったんだろう?
今は、何とも思ってないんだろうか?
元カノと女友達のままいられるものなのか?
滋とは、気が合いそうだけど、
過去のことが気にならないと言えば嘘になる

「司と初めてデートした時さ、寒い!眠い!帰る!だもんね
 それから何度も会ってんのに、指1本触れてこなかったわ
 私ってさ、よっぽど女としての魅力がなかったんだろうね
 あっさりフラれちゃった・・・・」

いたずらぽく笑う滋の本心なのか?つくしには、わからなかった
桜子は、相変わらずツンツンして、つくしの事を
受け入れる気はなそうだ
司が一番信頼してる女友達だと聞いている以上、
仲良くしなければ、彼の顔を潰すことになると
気がつかないふりをしていた

RRRRRRRR RRRRRRR

滋の携帯電話が鳴っている

「ごめん・・・電話だ・・・」

仕事の相手なのか?難しそうな話をしていた

「牧野先輩。素敵なお庭なのに、お茶だけ飲んでるのも
勿体ないですから、少し歩きませんか?」

桜子の口調は、穏やかで、自分が勝手に彼女の事を
誤解しているのかも知れないと思い一緒に
庭の散策に行くことにした
立ち上がり、店内にいる司に目をやると、こっちをみていた
早く出て来てきてくれれば良いのに・・・
そう思いながら、歩き出す

桜の花が散り、ピンク色のハナミズキが満開に咲き誇っている
春には、可愛らしい花を咲かせ、秋には赤い実をつけ
紅葉も奇麗なハナミズキは一年中楽しめる樹木として
人気が高い
何気なく、葉の裏を見ると、アゲハチョウが羽を閉じ状態で
とまっていた。眠っているのか?
そう言えば、蝶々が夜、飛んでるところは見たことがない
庭の散策も、色々な発見があって、面白いもんだと
桜子の機嫌の悪いことも忘れて見入っていた

「牧野先輩・・・勘違いなさらないで下さい」

突然、語尾を強めた桜子が、嘲笑うかのように話しかけてきた
つくしは、何のこと?と、桜子の横顔をみた

「滋さんは、ああ言ってましたけど、道明寺さんとは
 ラブラブで、フラれたのは滋さんではなくて
 道明寺さんの方ですから
 私と滋さんが、どうして呼ばれたかわかりますか?
 今カノと元カノが同席するなんて、あり得ないじゃないですか
 道明寺さんは、滋さんを取り戻す為に、一芝居打ったんです
 先輩と婚約したと知れば、滋さんだって気にならないはずがない
 だって、あれだけ愛しあっていたんですもの・・・
 道明寺さんは、滋さんに嫉妬して欲しかった
 戻って来て欲しかったんです
 ふたりの腕時計見たでしょう?お揃いのロレックス、
 道明寺さんが、滋さんに贈ったものです
 滋さんだって、本当は、道明寺さんとよりを戻したい
 だから、ここへ来たんです。邪魔しないでもらえません?
 相思相愛のふたりを貴女が邪魔する権利なんてありませんから」

ハナミズキを手でむしり取って投げ捨てた桜子が
冷たい笑みを浮かべながら、つくしに言った

「つくし、桜子・・・ごめん・・お茶、冷めちゃったね
 入れ直してもらう?」

電話を終えた滋が、いつの間にか傍にいた事も気づかなかった

「あたし、もういい。お腹いっぱいだから飲めないかも?」

「プティフールが残ってるのに?美味しそうだよ
 別腹で食べれるっしょ?」

つくしの様子が変だ。桜子に何か言われたのか?
滋は、スマホを取り出すと
つくしが寂しそうだから来てあげてと
司にメールを打っていた

「ちょっと、外の様子てくるわ」

幼馴染みを残して、司は、一人部屋を出て行った

「すっかり変わっちまったな」

「それだけ、つくしちゃんに、惚れてるって事じゃねぇーの?」

慌てて出て行く司の背中を見ながら、総二郎とあきらが呟いた

「良い子だよ・・・」

司同様、女の事は、適当な類が、ボソッと言う

司が傍に来たのに、つくしは目を合わさない
桜子に、何か言われたか・・・・・
すまないと言いたげに、つくしの肩に手を乗せ引き寄せると
髪に、キスをする

「どうした?お前の好きな焼き菓子食べてないじゃん
 他の物に変えてもらうか?」

「いらない。お腹いっぱいだから」

素っ気ない、つくしの態度に、司が、何があったと
滋と桜子に向かって交互に視線を流す
滋は、首を左右に振り、桜子は、いい気味だと目を逸らした

「そろそろ、帰っか?」

機嫌を伺うように、つくしの顔を覗き込んで聞いても返事がない
待たせていた、車に、つくしを乗せた後、
滋と桜子を置いて無言で歩いてゆく

「あれ?つくしちゃんは?」

「俺ら、先に帰るから、お前ら、好きなだけいろよ」

なんとなく機嫌が悪い司に、幼馴染み達は
お疲れ!と右手を挙げて、突っ込みも入れず見送った

「なんかあったんか?機嫌悪かったよな」

総二郎が、やれやれと、ため息を漏らす

「桜子に、なにか言われたのかもね」

類は、全部、お見通しだと言いたげに、外の様子を見ていた

「桜子、つくしに変なこと言ってないでしょうね?」

「言う訳、ないじゃないですか・・・道明寺さんの大切な人ですよ
 私だって、仲良くしたいですもの」

付き合いの長い滋に、嘘は通用しないのに
桜子は、しらを切り通した

「司、つくし、また、ゆっくりね・・・」

パーキングまで見送りに来ていた、滋が声をかけた

「牧野先輩。ありがとうございました」

司の前では、別人な桜子が、笑顔で言った
無視するほど、つくしも子供じゃない。ふたりに礼を伝えると
車が静かに出発する

「具合でも悪いのか?」

「別に・・・・・」

目も合わさず返事をすると、つくしは、窓の外を見ていた
指先を絡めるように手を繋いできた
司の左手首にチラリと視線を向ける
ロレックスの腕時計・・確かに、滋と同じだ
司が、滋と婚約していた事は事実。滋も、それを認めている
つくしは、心の中で、やっぱり・・・
あたしなんか・・・好きになるわけないよね・・
傷が深くならないうちに、あの部屋を出よう
また、一からやり直すだけのことなんだから・・・
婚約した、ふたりの間に不吉な暗雲が立ち込め始めていた

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  • Ranmaru*
  • URL
Re: 桜子~(-- )

かたくりさま

こんにちは!
コメント頂き、ありがとうございました
女の嫉妬は、破壊力抜群です
つくしの事、好きになってくれるのか?
敵のままなのか?どうしましょう?

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