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鍾愛 68

司達が去った後、客の視線が男に集まっていた
男は、メルセデスがパーキングから出て行った事を確認すると
オーダー票を手に持ち立ち上がる
客達が、ひそひそ話しをしていても男は、気にする様子もなかった
偶然とは言え、牧野つくしと道明寺司が繋がっていたとは
だて眼鏡の奥の瞳が、ニャリと笑う

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司に手を引かれ、押し込められるように車に乗せられたつくしは
内心、嬉しかった
このあまい香り・・・あたしってば、どんだけ、司ロスなんだ・・
無意識に、鼻をひくつかせていたら視線を感じて横を向いた

ドキッ

見られてた・・・・司と目が合い、恥ずかしくなって
慌てて目を伏せる

「で・・・部屋探すって、どう言う事だ」

「それより、どうして、ここがわかったの?」

「それは、お前の・・・・・」

「お前の・・・なに?」

「俺の勘!この近くで飯食べてて見つけたんだよ!」

助手席に、秘書の西田が坐っている
嘘は言ってないと、つくしは、納得する

「だって、あたしの帰る家ないんだもん
 だから探してただけ。あんたには関係ないでしょ」

わざと、ふくれ面をして、司の反応を待った
司は、大袈裟にため息をつき数秒間黙り込むと
つくしに視線を投げかける

「家ならあんだろ・・仮住まいだけどな」

「あそこは、あたしの家じゃない
 どうして勝手にアパート解約したの」

「必要ねぇだろ。結婚すんのによぉ
 それとも何か?あそこで新婚生活送ろうって言うのか?」

「はぁ?」

なに言ってんだ、こいつ!と、つくしが顔を歪める

「あんた、滋さんと結婚したいんでしょ!何で、あたしと・・・」

「あぁ?滋?」

「お前よぉ、正気か?言っとくがなぁ、滋と婚約したのは
 高校の時だ。親が勝手に決めた相手だよ!
 誰が、あんなサル女、好きになんだよ」

あんなに綺麗な滋さんを猿って・・・
だったら、あたしなんて、みじんこレベルじゃない!

「付き合ってたんでしょ。滋さんから聞いたんだから」

「あの女、ペラペラ喋りやがって・・・」

「やっぱり、そうじゃん!」

「親が煩いから、何回か会っただけだよ」

「その時計、好きな人とお揃いだったよね
 滋さんが同じ時計してたの見たんだから」

つくしも、段々、ヒートアップして、噛みついてくる

「知るか!滋が、どんな時計してるかなんて
 興味ねぇのに・・・
 この時計はな・・・俺が憧れてた人がしてたんだよ
 言っとくけど、そいつは、男だ」

「えっ?」

そう言うと、司は、ウインドーガラスを下げ、
おもむろに、時計を外すと窓の外へ放り投げた

「あっ・・・・」

後続のダンプカーが、グシャりと時計を踏みつけていた

つくしは、窓を開け上半身を乗り出し
風になびく長い髪を押さえながら
アスファルトに目が釘付けになっている
段々、小さくなってゆく腕時計を
司は、気にも止めず、危ねぇ!と、
長い腕で囲うようにして、つくしをシートに座らせた

「ごめん・・・・大事な時計が・・・」

「そんな事は、どうでもいい・・
 俺は、お前に信用されてなかった事の方が、
 よっぽどショックだ・・・」

真っ直ぐ前を見据えて呟いた司は、自信さなげで
今まで見せたことも無いような寂しい横顔をしていた
つくしは、ハッとして、唇を噛む
司は、黙ったまま、ぼんやりと窓の外を見ている
何度も、盗み見るように、司に視線をやったが
かける言葉が見つからない
ギスギスした、渇いた空気が漂う車内。車が停車してことさえ
つくしは、気がつかなかったくらいだ

「俺は、まだ仕事が残ってる。送ってもらえ」

と、声をかけると
司は、自分でドアを開け、車道側から降りて
つくしが坐る歩道側に回り込んだ
西田は、気を利かせ、道明寺HDの入口まで歩いて行き
ふたりの様子を見守る
ドアの庇に手を置いた司は、つくしの目線まで
かがむと、つくしの顔を見ていた
ウインドーガラスを下げた、つくしが言葉をかけてきた

「帰ってくるの遅くなりそう・・・」

司は、嬉しそうに目を細め優しく笑う
泣きそう・・・つくしは、思わず口許を押さえていた

「なるべく早く帰る」

「うん・・・」

「なに食べたい?」

「俺の好きな物。食べさせてくれるか?」

「難しいのは無理だよ」

「ああ。簡単だ・・・そんなの一つしかねぇだろ?」

「??????」

「お前を食べさせて・・・」

「えっ?」

「出せ」

低いが、よく通る声で司が運転手に声をかけた

「畏まりました。つくし様、出発致します」

運転手が、チラリと後部座席にお伺いをたてる

「なんて顔してんだ」

ゆっくり動き出した車を司が速歩で追いかけながら
つくしの唇にリトルキスをする
西田は、目を伏せると、笑みを浮かべていた
自社前で、司が恋人とキスをしていた噂は
瞬く間に社内に広がり、
その相手は、つくしではなく、
いつの間にか、みずきに変わっていた
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