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鍾愛 74

酔いつぶれた司を西田ひとりでは、
サポートすることは無理だっただろう
体力が衰えたとは言え、元警察官でもあり
武道にも精通していた柴崎が
いてくれたお陰でどうにか司を車に
乗せることが出来たようなもんだ 
西田が、助手席に座りシートベルトをしめる間、
柴崎は、ルームミラー越しに後部座席で
グロッキーな司に視線をやった
決して楽しい酒ではなかったが
眠ってる間だけでも、嫌なことを忘れられるのなら、
悪酔いでも良いのではないか
柴崎は、親心に似た気持ちになっていた

「西田さんは、司様が言った事をどう思われますか」

「それは、元刑事と言う立場で聞いていらっしゃるのですか」

柴崎は、西田より10歳年上で、
道明寺家に仕えているのも柴崎の方が長く先輩にあたる
司のブレーンとして、双璧をなす二人は、
共に行動する機会が多いのに
お互い、プライベートな話をする事は、ほぼなかった
そのせいか柴崎は、先輩であるにもかかわらず、
西田と話すときは、今でも敬語だ

「それもあるかも知れません。8年前、
 殺人事件の時効廃止法案が可決されました
 でも、あまりにも時間が経ちすぎている
 物的証拠など無いに等しい立件は難しい・・・・」

「まるで会長が容疑者のような物言いですね」

その言葉に、柴崎が、ふっと口元を緩めた
西田は、司の祖父である名誉会長ではなく、
父親であり、会長の誠の事を口にした
まんまと、柴崎の誘導尋問に引っかかったと
気がついた西田は、一瞬じろりと柴崎の顔を見た

「嫌な予感がするんです。色々とね・・・」 
柴崎は、西田の言葉を気にする様子もなく話を続けた

「何も事が起こってないのに打つ手もないでしょう?
 私達の役目は、お二人を全力でお守りする。それだけです」

ここで推測だけの議論は無駄だと二人にはわかっていた
今の話を司に聞かれてないか?
柴崎は、確かめるように、もう一度ルームミラーに視線をやった

つくしが待つ自宅マンションに到着したのは
午後11時過ぎになろうとしていた
指紋認証のエレベーターのドアを開ける為
泥酔状態の司の指を強引に押し付け
西田と柴崎が両脇を抱え乗り込んだ
狭い空間で、独特のアルコール臭が充満する

「もうそろそろ帰って来るんじゃない?」

夕食後、二杯目のお茶を
飲み終わった類が席を立った

「このへんで退散しようかな
司に、絡まられたらたまったもんじゃないからね」

イタズラぽく笑うと類は、玄関ではなく
リビングの隅に歩いて行き、
つくしが勝手にクローゼットだと思い込んでいたドアを開けた

「ごちそうさま。おやすみ」 

振り向き様、こんな時間なのに
爽やかすぎる笑みだけ残して部屋に戻って行った
将来、彼の奥さんになる人の部屋だとは聞いていたが
まさか続き部屋になっていたとは知らなかった
司との会話も丸聞こえだったのか・・・
急に恥ずかしくなったつくしは、やだぁ、もう・・・と、
嘆くように呟いていた

ピーンポーン

類の予感が的中したように、司が帰ってきた
インターフォンのモニターを確認すると
西田の顔がどアップで映し出されていた
何かあったのか?慌てて、玄関の扉を開けた
西田と柴崎に抱えられ、うな垂れる司の姿に驚いて、
つくしは、思わず司の大きな手を握りしめていた

「何かあったんですか」

「偶然、取引先の社長とお会いしまして
飲みに行くことになってしまい
ついつい飲み過ぎになられたようです」

司らしくない姿に、一瞬、つくしの血気が引き
西田と柴崎の顔を交互に見たが
ふたりが落ちついた表情を見せている事で安心した

「こんな時間まですみません
ご迷惑かけついでに彼を寝室まで運んで頂けたら助かります」

185cmの司を抱えるのは、大の男二人でも大変そうなのに
160cmでやせっぽちのつくしでは到底運びきれないと思い
お願いした。玄関にしゃがみ込み
脱力しきっている司の靴を脱がせるだけで一苦労
靴紐をほどいて、かかとから引き抜くだけなのに
上手く行かない
司がうっすらと目を開け足元を見ると、
愛しい女のつむじが見えた

「帰ったぞ・・・」と、低い声でつくしに声をかけた

ふらふらと揺れる身体で立ったまま寝ているのか?
ドラマでみる酔っぱらいそのままだ
司は、つくしを視界にとらえると安心したように、
また目を閉じて身体を揺らしていた
やっとの思いで靴を脱がせ、西田達を寝室へ案内する
つくしは、何度も振り返って心配そうな顔をしていた

「ベッドにつきましたよ」と、柴崎が声をかけ

担いでいた司の肩をゆっくりと抜き腰を支えた
西田も、同じ様な動作をして、ようやくベッドに
寝かすことが出来た

「ほんと、手がかかるんだから」

つくしが呆れたように呟くと、
西田と柴崎は互いに視線だけを合わせて微笑した
後は、任せよう。ふたりが寝室を出たところで
ベッドから離れた、つくしが声をかけてきた

「ちょっとだけ待ってもらえますか?」

早足でキッチンに行き冷蔵庫を開け
冷えた、ミネラルウォーターを2本取り出し
病院帰りのスーパーで買ったオレンジと一緒に
ビニール袋入れると、こんな物しかなくって・・・と
申し訳なさそうな顔をして、ふたりに手渡してきた

「すみません。ありがとうございます」

柴崎が、人の良さそうな笑顔を見せながらつくしに礼を伝えた
エレベーターは、指紋認証でしか開かない
つくしは、ふたりをエレベーター前まで見送りに出た

「明日は、重要な会議もございません
 ゆっくり休養して下さいと司様にお伝え頂けますか?」

「二日酔いで休むなんて、たるんでます!」

西田の気遣いに、つくしは、頬をぷっと膨らませて
戯けるように言った
ふたりが話している間、柴崎は、辺りをぐるりと見渡して
防犯カメラの位置、非常勤階段を確認していた
セキュリティを強化すればするほど、緊急時にデメリットが
生じる。助けを呼びたくても、セキュリティがガードして
逃げ遅れて取り残される、発見が遅れる事もありうる
元刑事の柴崎は、ここなら完全犯罪も可能かも知れないとまで
思ってしまった

つくしと西田の話が終わると、二人はエレベーターに乗り込んだ

「ここは、まずいですね・・・」

柴崎が何を言いたいのか西田もすぐ理解できた

「司様に、話してみます」

==========

ふたりを見送った後、つくしは部屋に戻って
キッチンの冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターとグラスを
トレイに置くと、オレンジの皮を剥きはじめた
薄皮をきれいに取り除いてガラスの皿に盛りつけ
司の元へに運ぶ
つくしが、ベッドの横に座って司に声をかけたけれど返事は無く
何度か寝返りを打ち目を閉じたままだった
酒には強いと聞いていたのに、ここまで泥酔するなんて
何かあったに違いない。鈍感なつくしでもわかる
司の髪を撫でながら寝顔をみていた

「起こしてくれ」

「大丈夫?」
 
「ああ・・・」

「お水飲む?口の中がスッキリするよ」

「うん」

つくしが肩を貸し、上半身を起こした司が
ヘッドボードに体を預けるように座る

「はい」

ミネラルウォーターの入ったグラスを渡し
ひとくち飲んだのを確認してから、皿に盛ったオレンジを
フォークに刺して手渡した

「美味しい?」

「ちょっと甘めぇーな」

「グレープフルーツもあるよ」

「いや、これでいい」

「西田さんがね、明日は会議もないから、
 ゆっくり休んで下さいって言ってた」

「あいつにしちゃぁ気が利くじゃねぇか」

「西田さんも、柴崎さんも、気遣いの人だよ」

「随分、肩持つんだな。あいつらの話は、もういい・・
 こっち来いよ」

自分の上にまたがれと司が、太股を叩いて催促する
いつもなら恥ずかしがるつくしも、素直に従った

「重くない?」

「ちょっとは重くなれ!」

そう言うと、つくしの細い腰に長い腕を回してきた
太股の上に座っている分、司の顔の位置が
つくしの胸の辺りに来る。つくしの髪を優しく撫でた後
司は、柔らかなつくしの胸に甘えるように顔を埋めた

「なんかあった?」

「どうして?」

「なんとなく・・・」

「なにもねぇーよ 」

「ほんとに?」

「ああ・・・」

「明日、どこか出かけるか?」

「ううん・・・」

「嫌か?」

「ここんとこ司も忙しそうだったし
 ゆっくりした方がいいよ・・その為の休暇なんだから」

「なぁ・・・」

「なに?」

「何でもない・・・」

酒の力を借りて、つくしに別れ話を
切り出そうと思ったが出来なかった
つくしの大好きな、司のあまいコロンの香りが
アルコールと混じりあって別人のように思えた
明日になれば、いつもの司に戻ってるだろうか?
つくしに抱きしめられながら、いつの間にか
司は寝息をたてていた
それは、酷く疲れた寝顔だった
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  • Ranmaru*
  • URL
Re: No title

shi*****koさま

ご無沙汰しております!
コメントのお返事遅くなりました

ここまで長くなる予定ではなかったのにぃぃ
何だか長くなってしまってます
私の司のイメージが、大人の司なので
どうしても、そうなってしまうかも?
ハッピーエンドの予定です!
最後まで、お付き合い頂けたら幸です
宜しくお願い致しますm(_ _)m

  • Ranmaru*
  • URL
Re: いかがお過ごしですか。

HSゆ*のさま

ご無沙汰しております!コメント頂きありがとうございます🎵
愛猫の時は、お気遣い頂き、ありがとうございますm(_ _)m

転職かぁ。私も日々考えてます
今の職場も、いやなおば様が定年退職したので
ずいぶん落ちついてきたり、新しい環境で一から・・と言うのも考えてしまう
でも、転職したい!スキルアップの転職頑張って下さい!
私も、頑張ろう!

グダグダの更新で、長くなってしまいました
早く終わらせようと思っているのですが
お暇潰しに覗いて下されば幸です
今年の夏は、暑くなりそうです
ハードワークで体調を崩されませんように

  • Ranmaru*
  • URL
Re: No title

チムチムさま

ご無沙汰です
二度もコメント頂いて、ありがとう(笑
オリジナル更新で止まってるぞぉぉぉぉ!
プライベートが忙しそうね
でも、プライベートが充実してる方が絶対良い!
私もやりたいことあるけど、お金と時間がないのがなぁぁ
私も、ダラダラ更新になってしまってます(グスン

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