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鍾愛 75

つくしは、ウトウトとまどろみ中にいた
昨夜は、司のことが気になって、なかなか寝付けなかった
いつもなら、司の腕の中で眠るのに、
昨日は、背を向ける司にピッタリとはりついて眠った

「いない・・・司がいない」

マットレスに、ほのかな温もりが残っている
つくしは、布団をはぎ取ってベッドを出た
ベッドルームのドアを開けると、上半身は裸
腰にタオルを巻いた司の後ろ姿が見えた
広い肩幅、肩甲骨がくっきりと浮かびあがり脇の下辺りの
広背筋が、程よく隆起している。見事なまでの逆三角形の体に
見とれてしまい、つくしは声をかけずにいた
やっぱり仕事が気になるのか?
司は、スマホを右手に持ち何か見ているようだった

「起こしちまったか?」

顔だけ後ろを向けた司の低い声が静かな室内に響いた
正面から見るより高い鼻が強調され
憂いを帯びた表情がドキッとさせた
司自身、意識していないだろうその仕草は、
何とも言えない切なさと優しさが入り混じっていた

「もう少し寝てろ。まだ早い」

「目が覚めちゃった。シャワー浴びてたの?」

「昨日、あのまんまん寝たから体がべたついて気持ち悪くってよ」

「あれだけ飲んだら二日酔いになってるでしょ?」

「バカ言うな!あの程度の酒で!」

「なら、良いけど・・・・」

つくしはわざと素っ気なく返していた
良かった。いつもの司に戻ってる
初めて会ったとき、なんて冷たい人だと思い軽蔑していた
一緒に食事しても不機嫌で、気に入らないと怒る
余計なことは喋るなとまで言われ、何度、腹が立った事か
なのに今は、こうして一緒に暮らしているのが不思議だった
司を知れば知るほど、彼の優しさと不器用さがわかり
つくしのくだらない話でも、きちんと耳を傾け適当な返事はしない

「今日は、俺と一緒に外で遊ぼうぜぇ!」

司が、つくしの後ろに立ち優しく抱きしめながら言った

「ええ?外で遊ぶの?」

「おにぎり作ってくれよ」

「おにぎり?」

「ガキの頃、おにぎり持って公園へ行ってたんだ」
 
「へえーーっ。お坊ちゃまなのに、おにぎり持って?
 海苔がないなぁ・・・あっ!焼おにぎりって食べたことある?
 醤油が焦げて、香ばしくって表面はパリっとしてんの
 凄く美味しいんだから!
 でも、冷めちゃうと美味しさも半減しちゃうんだよね・・」

「おにぎりなら、何でもいい」

「それなら、すぐ出来るよ。昨日、司が夕食たべなかったから
 残ってるご飯、おにぎりにして冷凍してある
 そうしとくとさ、朝ごはんにもなるし、お弁当にもなるから
 いつも多めに炊いて冷凍しとくの」

「ふーーーん。時間が勿体ねぇから支度しろ」

「まだ、7時だよ?」

「行きたいとこがあんだ」

「どこよ?」

「それは、お楽しみって事で」

司が、にこにこ楽しそうに笑う
つくしが焼おにぎりを作ってる間
司は、コーヒーを飲んで待っていた
本当は、二日酔いで体調は思わしくなく
それでも、つくしを連れて行きたい所があった

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司と出かける時は、洒落たレストランか買い物ばかり
デートらしいデートと言えば水族館に行ったくらいで
今日のお出かけは嬉しいかも!と、
つくしは、ウキウキした気分になっていた

「よいしょっ」リュックを背負おうとすると
司が、奪うようように自分の肩にかけた

「重ってぇなぁ。なに入ってんだよ?」

「二人分のお茶とぉ、ポットに入れたコーヒーとぉ、
おにぎりぃ、おしぼりぃ、タオル、フルーツ、
それと、レジャーシート!」

「お茶なんか、自販機で売ってんだろ?」

「それが飲みたいときに限って意外とないもんなんだって!
花沢類と虫とりに行ったとき苦労したんだから!
備えあれば憂いなしって言うでしょ?」

「なるほど・・・・」

「ああ、そうだ!花沢類にお礼書いとく
昨日、司の帰りが遅いから心配して付き合ってくれたんだ」

類の部屋の玄関ドアにお礼のメッセージを
挟んでから、二人は出掛けた
天気も悪くない。気温も暑からず寒からず
丁度いい感じだ

「おはようございます」

早朝の散歩は、司とつくしを楽しませてくれた
犬を連れた人、ウォーキングしてる人
見知らぬ人と挨拶を交わしながら目的地の公園まで
約5K程、手を繋ぎ1時間かけて歩いた

「ちょっとひと休みするか?」

「そうだね。結構歩いたね」

つくしがにっこり笑う
リュックからレジャーシートを取り出して広げると
ふたり並んで座った
辺りにはタンポポが咲いていた。司は、綿毛を引っこ抜き
つくしに手渡してきた

「どっちが遠くに飛ばせるか競争しようぜ」

「ええ?」

「まずは、俺から」

「ふぅーーーっ」

司の肺活量でも、綿毛は一気に飛ばず
目の前から少し離れた場所でフワフワと舞っている

「今度は、お前の番。やって見ろよ」

「ふぅーーーっ。これじゃーどちの種かわかんない
 そのうち遠くまで風が運んでくれるのかな?」

「だろうな・・・」

司は、また、ふぅーーーっと綿毛を飛ばした

「はい、コーヒー!持ってきて正解だったでしょう?」

二日酔いの司のために、柑橘系のフルーツを
タッパーに入れ、保冷剤を巻いて持って来ていたのを
コーヒーと一緒に手渡した後、膝の上にタオルを置いた

「なんだこれ?俺は、ガキか!」

「果汁って、意外と飛んだりするんだよ
 洋服にシミが出来ると落ちないでしょ?
 特に、コーヒー滲みは厄介だよ」

つくしに世話を焼かれるのは嬉しい
子供みたいな我が儘を言うのは、司の甘えでもあり
癒しにもなっていた

「あたしさ、つくしって名前が嫌いだったんだ
 ○○子とか、○○美とか可愛い名前だと良かったのにって
 学校で名前を呼ばれる度に、恥ずかしくって小さくなってた
 でも・・・やっと自分の名前が好きになったかも?」

司がつくしと呼んでくれるからだと照れもあって言わなかった

「つくしって名前、俺は好きだけどな
 俺も、司って名前、好きじゃなかった
 ほら、女でも司っているじゃん。女みてぇな名前だと思ってた」

「道明寺司クン!芸能人みたいで、かっこいいのに」

つくしがいたずらぽく笑う

「俺も、自分の名前が好きになった
 お前が、甘ったるい声で呼んでくれるから」

司は、いつもきちんと自分の気持ちを素直に伝えてくれる
時には、聞いてるつくしが恥ずかしくなる様な言葉も
ストレートに言ったりした
コーヒーを飲み終えると、司は仰向けに寝そべり
寝不足もあって知らぬ間に、ウトウトと眠りに落ちていた

「司、四葉のクローバーを探してくれないか?」

「四葉のクローバー?」

「ほら、これを見てごらん、葉っぱが3つしかないだろ?
 四葉のクローバーは、もう一枚葉っぱがついてるんだ
 それを見つけると、幸せが訪れるって言われてるんだ」

「幸せってなに?」

「司は、まだ小さいからわかんないか・・・」

「望お兄ちゃんが欲しいの?四葉のクローバー?」

「そうだよ。司も一緒に探してくれる?」

「良いよ!」

俺は、夢の中に居た。幼いあの頃に戻って
朝から日の暮れまで、望お兄ちゃんと
いつも遊びに行く公園で、
ひたすら四葉のクローバーを探していた
夕日が空を真っ赤に染める頃

「あった!あったよ!見つけた!」

「ほんとだ!よく見つけたね!凄いよ!司!」

「ねぇ、あの子、さっきからずっといるね」

小学校低学年くらいの女の子がクローバー畑で
何かを探していた

「どうしたの?何か探してるの?」

望お兄ちゃんが女の子に声をかけるのを
俺は、後ろで隠れるようにして見ていた

「うん。四葉のクローバー探してるの
 お母さんが病気で、入院してるから・・・
 持って行ってあげたいんだ」

「そう・・・もう直ぐ日が暮れてしまう
 司、見つけたクローバーを、この子にプレゼントしようよ」

「ええ?せっかくボクが見つけたのに・・・」

「また探せばいい」

「はい、これ・・・」

本当は、嫌だったのに、俺は女の子にクローバーを手渡した

「貰ってもいいの?ありがとう!」

キラキラした笑顔が輝いていた
俺は、凄く良いことをしたように思えて気分が良かった

「ちょっと待ってて」

母親が入院してるから?四葉のクローバーを探していたからか?
女の子の洋服は、ひどく汚れていた
望お兄ちゃんが器用にシロツメクサで花冠を編むと
汚れた女の子の服の砂埃をはらってやり、
花冠を頭の上に乗せてやった

「可愛い。これも貰っても良いの?」

「どうぞ。家はどこ?送ってあげるよ」

「ううん。すぐ近くだから大丈夫」

「そう・・お母さんが早く元気になるといいねぇ」

「お兄ちゃん、ありがとう。それから、小さいボクも、ありがとう」

女の子が、大急ぎでかけていくのを二人で見送った

「どうして、あの子にあげちゃったの?
 望お兄ちゃんが欲しかったんでしょ?」

褒めてもらいたくて、一生懸命探したのに
俺は、膨れっ面をしながら、背の高い望お兄ちゃんを見上げていた
なのに、俺の頭を優しく撫でながら笑っていた

「やだよぉ!行っちゃやだぁ。どうして行っちゃうの?」

望お兄ちゃんがN.Yに行ってしまう
別れの朝に場面は切り替わっていた
俺は、泣きじゃくりながら駄々をこねた
しがみつき、暴れ、手当たり次第に物をぶち壊した

「司・・・邸の庭にもクローバーがあるの知ってる?
 四葉のクローバーを見つけたら教えてくれるかな?
 必ず見に帰ってくるよ」

俺を抱きかかえ、いつものように優しく呟いた

「ほんとに?」

「うん。約束だ・・・」

そう言って指切りをした
あの日から、毎日、庭に出ては四葉のクローバーを探したのに
見つからなかった
シロツメクサ・・・クローバーの花言葉
「約束、幸運、そして、復讐・・・」

「はっ!・・・ここはどこだ・・・」

目が覚めると、コーヒーが入った紙コップを両手で包み込み
長い黒髪を風で揺らすつくしの横顔が叔父の望と
重なり合うように見えた

「起きた?」

「悪い・・・寝ちまってた」

「夢見てたの?」

「寝言でも言ってたか?」

「うん」

「何て?」

「嫌だ・・・行っちゃ嫌だって」

司は寝転だまま、つくしの頭に手を置いた

「俺の一番好きだった人が遠くに行っちまった
 でもよぉ、今は二番に降格した・・・
 一番が出来ちまったからな・・ここに」

つくしの頭に置いている大きな手をポンポンと叩いて微笑んだ

「また会えると良いね」

切なそうな顔をしたつくしが司の顔を覗き込んで呟く

「もう、会えねぇんだよ・・・でも・・・」

「でも?」

「いや、なんでもない。お前、大丈夫か?
 俺に付き合って、あんまし寝てないだろ?」

「うっ・・・」  

つくしは、飲んでいたコーヒーを一瞬喉に詰まらせた
バレてたか・・・・

「お前よぉ、俺の背中にぴったり張りついてたよなぁ」

「夢見てたんじゃないの?」

「いいや、夢じゃねぇーな。ぷにゅぷにゅしたのが
 ふたつ、俺の背中で動いてたぜぇ」

「ふぅーーっ」

恥ずかしくなったつくしは、タンポポの綿毛を抜き
寝転がる司に向かって飛ばした

「なにすんだよぉぉぉ!口の中に入ったじゃねぇか!」
 
司は、がばーーーっと起き上がり
ひと目も気にせず、つくしの唇を奪っていた

「むぅぐぅぐぅぐぅ。ハァーーーっ
 ちょっと!急になにすんのよぉ!息が出来ないじゃない!」

「出来ないようにしてんだよぉ!いたずらしやがって!」

「いたずらなんかしてないもんねぇー!」

「るっせぇ!もっとお仕置きして欲しいかぁ?」

「ぐわぁぁぁ」

「むぐぅぅぅとか、ぐわぁぁとか言うんじゃねぇーよ!」

早業とも思える動きで、気がつけば
つくしは、司の腕の中に閉じ込められていた

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HNさま

こんにちは!
こちらは、朝から雨模様
火曜日は、30度近く気温が上がりそうです
昨日、親戚の結婚式に出席してきました
教会での挙式に、司とつくしもこんな感じかな?と
妄想が膨らんでおりました
生の賛美歌を聴けて感動して帰ってまいりました
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