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鍾愛 80

「ババァは、今日来るのか?」

「すでに、ご出社されております」

「なるほど・・・・」

朝から、気分が悪い。楓が製薬会社を買収しようがしまいが
司にとっては、どうでもいい事だ
それより、いつの間にか、みずきと婚約した事になっていたのは
寝耳に水。朝一番で放映されるワイドショーのスクープとして
話題を提供するように仕向けられていた
鉄の女と呼ばれ、策士として経済界で恐れられていたのは
昔の話なのか?低俗なやり方を見下すように
司は、冷たく渇いた笑いを浮かべた

チーン

エレベーターの扉が開き、待ちかねたように
コツコツと響き渡るヒールの音が近づいてくる
楓の靴音は、歩き方の癖なのか独特の響きがあって
姿をみずとも楓だとわかるくらいだった

「おはようございます。ずいぶん、お早い出社なのですね」

「ええ。片付けなければならない事がありすぎて
 いくら時間があっても足りません・・・
 司さん。お話があります。わたくしの部屋まで来るように」

「申し訳ございません。今朝は立て込んでおります
 朝から、くだらない連中に足止めされたもので
 用があるなら、ここで伺います」

西田は、一歩下がったところで、対顔するふたりを見守っていた

「明日の夜、椎名製薬の社長と会食する事になっています
 貴方も同席して頂きます」

「残念です。あいにく明日は、私もクライアントと
 約束がありますので同席できません」

「これは、上司としての命令です。わかりましたね」

司は、ふっと口元を緩めて意味深な言葉を吐いた

「唇に毒を塗るには覚悟がいります」

楓は、ジロリと睨みつけ
司の脅しなど可愛いものだと相手にせず聞き流した

「あの時とは違います・・・24年前とは」

一瞬、動揺した楓が眉間に皺を寄せると
そんな事・・と言いたげに作り笑いを浮かべた

「明日夜8時。メープルです」

冷たい視線と視線が行き交う中、司のスマホが鳴った
これ以上はまずいと西田が気を利かせて
わざとコールしたものだった。それを合図に
ふたりは、お互い背を向けて歩き出した
楓は一度たちどまり振り返って、司の後ろ姿に視線をやっていた

==============

弁当を持って来なかったつくしは、
気分転換も兼ねて昼休憩の為、外へ出た
柴崎が一定の距離を保ちながら後に続く
車道の端を一台のローバイクが物凄い勢いで走り去り
何かを感じとった柴崎が走りだした

「花沢類!」
 
「こんなとこで会うなんて、どこ行くの?」

「あたし?お昼食べに。花沢類は?」
 
「俺?おつかい」

「おつかい?」

「そう。おつかい。区役所まで。時間ある?
 せっかく会ったんだし、一緒にお昼食べない?」

「そうだね!」

「花沢様か・・・」

柴崎は、ホッとして深いため息をついた後
また、一定の距離を保ちながら、つくしの後を追う

「かっこいい自転車だね」

「色々カスタマイズしてあるから
 近いうちにサイクリングに行こうよ!司も誘って」

「そうだね・・・で、なに食べよっか?
 サブウェイなんてどう?花沢類でも食べられそうな物あるから」

「うん」

ふたりは昼食を共にするため、テイクアウトした
サンドイッチを持って公園のベンチに腰を下ろしていた

「この間のピザとワイン美味しかった!ありがとう」

「どういたしまして
 何だか元気ないね。気のせいかな?」

「退職届出したんだ・・・お疲れさまって
 たった一言だけだった。引き止められる事もなく
 あたしなりに、一生懸命仕事してきたつもりなのに
 寂しいなぁ・・・って思って」

「良かったじゃない。引き止められなくて
 引き止められてたら、辞めにくかったでしょ?」

「そりゃぁそうだけど・・・」

「元気だして。キミのこと必要としてる
 誰かさんがいるんだから」

裏から司が手を回したと気づいた類は黙っておくことにした

「あっ!そうだ。花沢類って、霊感あるんだって?司が言ってた」

「ないよ。口から出任せ。司をからかっただけ」

「そうなの?なぁーんだ」

「がっかりした?」 

「花沢類に霊感があったら、聞きたいことがあったんだ」

「司のこと?」

「ううん・・・違う」

「何?言ってみて」

「たいしたことじゃないから、忘れて・・
 ねぇ・・・花沢類は、生まれてきて良かったって思う?」

「どうかな・・・それは死ぬ間際になって
 やっと答えがでるのかも知れないね」

「なに不自由なく育って、ご両親に愛されて
 それでも良かったって思えないの?」

「俺は、屈折してるから
 ガキの頃、誰か、ここから連れだしてくれれば良いのにって
 思ってた。司や、総二郎、あきらと友達になって
 一緒にいたら楽しいけど、心は自由じゃなかった
 何かを与えて貰うのが当たり前で、物は溢れてるのに
 ちっとも心は満たされなかった
 車で送り迎えも良いけど、あそこの中から風の音も
 木々の囁きも、鳥のさえずりも、太陽の目映さも
 街の匂いもわからない。自転車に乗ると季節の移り変わりとか
 色んな発見があって、立ち止まって道草したり楽しいんだ
 心を縛るのは誰かじゃない自分自身だよ
 司も、孤独だった。ずっと長い間・・・
 キミからたくさん心のギフトを貰って自由になったんだ
 ギフトって言葉、英語では贈り物だけど
 ドイツ語でギフトは、毒って意味なんだ」

「毒・・・・」

ハッとして、つくしは、類の横顔を見つめた

「さて、そろそろ行く?」

類に言われ、時計を見ると12時45分を指していた
昼休みも終わってしまう
ベンチから先に立ち上がった類が右手を伸ばしてきた
つくしは、類の手に掴まった。大きな手は、司とは違う
ぬくもりをくれた

「先に行ってて、そこの自販機でミネラルウォーター買うから」

マウンテンバイクを押しながら類が自販機に向う
コインを入れて、ボタンを押す。出てきたミネラルウォーターを
右手に持つと、振りかぶってきれいなフォームで投げた先は
付け髭を携え、黒縁眼鏡に帽子を目深にかぶった柴崎だった

「バレてましたか・・・」

類が投げたミネラルウォーターを受け取ると
柴崎は会釈して、にっこり微笑んでいた

「お待たせ。行こうか」

「うん・・・・花沢類・・・ありがとう」

公園を出ると互いに手を振って別れた
マウンテンバイクに乗って走り去る類の靡く髪と後ろ姿に
つくしは、もう一度、手を振った

==============

HN様

こんにちは!
そうなんです。昔は、ライダーでした
一応、大型免許持っています
250→750→1100ccと乗り継いで
途中、オフロードバイクにも乗ってたりしました
でも、今は、車派です!夏はエアコンで涼しいし
冬は、暖房でポカポカ。そら、車でしょ?ってなってます
北海道、走ってみたい
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Comment

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  • Ranmaru*
  • URL
Re: No title

瀬*様

こんにちは。
コメント頂き、ありがとうございます!
ここまで長びかせるつもりはなかったのに長編になってしまってます

ブロック注射の効果はどれくらいなのでしょうか?
私は、慢性的な頭痛持ちで、鎮痛剤を飲みまくってるので
整形外科で出してもらった痛み止めが効かない
ドクターに効かないって言ったら、
あの薬、一番強い鎮痛剤なんだけどなぁって言われました
MRI撮った方が良いのかな?
こうなったのも、体重増加もあります
7Kダイエットは凄い!
水中ウォーキング、ゆるーく泳いだりストレッチしたり
筋肉をほぐすようにって
夜は、眠い!睡魔に勝てないのでスポクラ復帰は無理そうです
でも、痛い。長時間、座ってられません
立ってる方がラクなんですよね







💥😢

  • Ranmaru*
  • URL
Re: Re: No title

> >
> お疲れさま!
> 更新してたね。サクサク書いて下さい
> 読みに参ります。
> ランキング復帰はないよ
> 細々と、目立たぬ場所で終わりを迎える予定です!

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