FC2ブログ

鍾愛 87

エントランスでのひと悶着は、楓の読み通り、
お嬢さまのファイティングスピリットと
タイトルをつけられ早速SNSで拡散されていた
そんな事も知らず、司達は、最上階の
会員制ラウンジに行くため、EVに乗り込んだ

「大丈夫か?口の中、見せてみろ」

つくしの顎をグイッと持ち上げ、
口を開けろと言われても
みんながいる手前、素直に大口を
開けられるはずもなく

「大丈夫だって。ねぇ、あの人どうなるの?
 警察に連れてかれるの」

「お前は、どこまで人が良いんだ
 あの女は、お前だけじゃない、
 柴崎の事も殴ってんだぞ」

司は呆れるどころか、つくしの言動に苛立ちを覚えた

「げぇーーーっ!柴崎さんもぉ
 何が、お嬢さま女優よ!聞いて呆れるわ
 チョームカつくんだよね。あの女。
 そーとぉー性格悪いよ」

滋は、EVの中で斜めに構えると
ボクシングのジャブのポーズを決める

「カッとなったら手が出る女って
 始末に負えねぇなぁ」

と、総二郎が言えば

「誰だよ、女の喧嘩はそそられるって 
 言ってたのは」

あきらが噛みつくように返した

「そう言えば、類は来ねぇの?」

あきらが司に訊いてきた

「あいつは、チャリで来るらしい」

「相変わらず変わってんなぁ」

「そこが花沢さんの良いところじゃん!」

総二郎と滋が顔を見合わせ笑った
EVの扉が開くとすぐ、ラウンジがある

「すっかり、ここにも来なくなったな」

あきらが、懐かしそうに呟いた
学生時代、親友達とハメをはずして夜通し遊んだ
想い出の場所
司もメープルのラウンジを訪れるのは数年ぶり
モノトーンで統一された空間は、
良い感じのレトロ感を演出している
最上階だけあって夜景が一望出来き
ラウンジを取り仕切るチーフは変わってないが
スタッフの顔ぶれが様変わりしていた

「いらっしゃいませ。ご無沙汰しております
 花沢様が、お待ちでございます」

チーフが深々と頭を下げた
幻想的な夜景に、つくしは、キャッと
嬉しそうな声をあげ、閑古鳥が鳴くラウンジに
司は、メープルの終焉を見たような気がした

「暇そうだな。いつもこんなもんか?」

「今日は、いつもよりお客様がいらっしゃいます
 ご案内致します」

見れば、ボックス席に、二組
20席余りあるテーブル席は半分も埋まってない
チーフと短いやり取りをして、司達は席についた

「花沢類!」

一番はじめに声をかけたのはつくしだった
類が、にゃりと意味深な笑いを浮かべて
スマホを差し出してきた

「お疲れさま。先に一杯やってるよ
 滋、大活躍してたんだね」

「何がよ?あっ!これ」

類に手渡されたスマホを食い入るように見た滋が
愉快そうにクスクス笑い出した

「早速、拡散されてんのか!良いのか?司」

「ああ、そのために来たくもねぇ
 メープルにしたんだから
 滋には、迷惑かけっけど・・・」

「ぜぇーんぜん平気だよ。でも▪▪つくし大丈夫?」

「何が?」

初めて来たラウンジに興味津々のつくしは
SNSは眼中にないようだった
総二郎は、類が飲みかけていた
ウイスキーのオンザロックを奪い取り
味わうように喉の奥に流し込むと言葉を続けた

「お前の彼女も、中々、肝玉座ってんじゃん!
 司も、滋も、明日から追いまわされるぞ
 ワイドショーにエサ投下したんだから」

「で、どうする?私達。口裏合わせておかないと
三角関係の縺れって流れなんだからさ」

滋は、ヤル気満々だ

「三角で終わんねぇよ。つくしちゃん入れて
四角関係だな。あの場にいたんだ
彼女も、槍玉にあげられる」

司は考えこんでしまった
出来ることなら、つくしを渦中に
引き摺りこみたくはない

「マスコミに圧力かけるか?それとも本命として
宣言するか?」

「まだ、その段階じゃねぇな」

翌日、あきらの心配と、滋との口裏合わせが
無用なものだと知ることとなる

「司さん。あなた大事なクライアントと
約束があったんじゃなくって?」

ラウンジまで楓が乗り込んできた
座る司を見下ろす状態で、
その表情は、彼女がどれ程不快に思っているか
見てとれた
つくしを向こうに連れて行ってくれと
司が、滋に目で合図を送る

「つくし、仕事の話があるみたい
私達は、席を外そう」

初めて会う司の母親に挨拶しなくていいのかと
つくしが小声で滋に耳打ちしたが
強引に少し離れたボックス席に連れていかれた

「砕けた場所での打ち合わせですから
誤解が生じるのも無理はありません
司くんが言うように、彼に仕事を依頼してます」

そう言ったのはあきらだ

「どうぞ、おかけ下さい」

楓が、腰をおろし細い脚を組んで
司が何と言うのか余裕の笑みを浮かべている

あきらの実家は、大手の不動産デベロッパー
跡継ぎで父親の経営する会社に在籍しているが
自分が手掛けたい事業もある
幼馴染み達は、家業とは別に
それぞれ会社を経営している

===========

デベロッパー(Developer)とは、開発事業者のこと
不動産デベロッパーは、大規模な宅地開発、
リゾート開発、都市開発、都市再開発、交通網の整備など行う企業体
===========
司は、フレンチレストランはじめ、
外食産業、投資会社、経営コンサルティングを
あきらは、不動産経営、IT事業、広告代理店
総二郎は、ヴィンテージバイクのショップ
類は、ワイナリーを立ち上げたばかりだ
互いの会社は、幼馴染み達が役員として
名を連ねていた

「実は、駅前に商業施設を建設予定で
司くんの個人的な会社と
契約を結んだんですよ
なんなら、契約内容をご覧になりますか?」

こんなこともあろうかと、
あきらは契約書を持参していた

「結構よ▪▪▪
司さん。もう一度言います
椎名製薬社長との会食、来ないつもりですか」

「言ったでしょ?
大事なクライアントと先約があると▪▪」

「後悔する事になってもですね▪▪▪▪▪」

「ええ、そうです」

「わかりました 」

楓は立ち上がると、奥のボックス席にいる
つくしを見ることもなく真っ直ぐ出口に
歩いて行った。つくしの事は認めない
そう言いたげに、決して振り向くことなく
ヒールの音を響かせながら去って行った

「胸くそ悪い」

司の怒りも相当なものだ
つくしと滋が座る席に向かって、あきらが
右手をあげた。こっちに来るなと言う意味だと
気がついた滋は、私達は、しばらくここで飲もうと
つくしに声をかけた

「ご注文は何になさいますか?」

修羅場がおさまってからボーイが
オーダーを訊きにきた
みな同じウイスキーのダルモアを注文し
司だけがストレートで
あとはオンザロックにした
つまみと一緒に、50年物のダルモアと
チェイサーが運ばれてきた
司は、煽るように一気に飲み干すと
二杯目を注文する

「ペース早いんじゃない?悪酔いするよ」

類が、心配顔で声をかけた

「貴重な酒だ。もっと味わって飲め!」

総二郎も、こりゃ大荒だなぁと
類とあきらに視線を動かしていた

「若葉会はどうなった?」

「みんな遠回しにお断りだったよ
俺達みたいに自分で事業展開してる奴らは
いねぇからな。まだまだ親の
すねかじりばっかだからよ、
司のかあーちゃんのおっかなさに
親達が尻込みしたって感じだな」

大手企業のジュニアの集まり若葉会を
再構築するため、あきらに頼んでいた

「どうする気だったんだ?」

「オッサンとババァを追い出す資金調達だよ」

「自分の親の会社を乗っ取るって
ただ事じゃーねぇよなぁ」

総二郎が、グラスを傾けながらしみじみ言う
 
滋は、司達の様子をチラ見していたが
まだ戻るタイミングではなさそうだと
つくしとふにり夜景を見ながらカクテルを楽しんでいた


「つくし、大丈夫?嫌な思いさせちゃったね」

「ううん。ごめんね。滋さんに謝らないと
いけないのは、あたしの方だよ
こうなる事、始めからわかってたから」

「諦めちゃダメだよ」

「うん。ありがとう」

司が心配しないように、わざと能天気なふ振る舞いをする
つくしに滋は気がついていた

===========
翌日

「なんだ、これは!」

司は、スマホを思い切り床に叩きつけていた

引退宣言した椎名みずき
噂の青年実業家との恋を実らせ婚約
午後から記者会見が開らかれる予定だと
ネットニュースが告げていた
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply