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鍾愛 91

「ごちそう様でした」

「珈琲と紅茶は、お口にあったかしら?」

「はい。とてもおいしかったです。また、お邪魔します」
 
「サイフォンが手に入ったらお越し下さい
 淹れ方を伝授しますから」

「ほんとですか!」

「ええ、いつでも・・・」

つくしの顔が満面の笑みに変わる
嬉しそうな横顔を見て、類もホッとしていた

「じゃ、行こうか」

「うん」

ママが、入り口まで送ってくれた後、店を出て
サイフォンを探しに行くことにした
類は、みずきの記者会見の時間が気になり
ちらちらと腕時計に目をやっていた

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「お前んとこの社食、結構うまいな
 これから、なんかあったら、ここで昼メシ食うわ」

総二郎が、がっつく様にビフカツを食べている

「司、食べないの?」

「食欲なんてねぇよ」

「打つ手はないと言いながら、ほんとは何か考えてんだろ?」

「いいや、お手上げって奴だ」

あきらと滋が口もとに運ぼうとした箸の手を止めた
降って湧いたような話なのだから、司が困惑するのも当然だと
わかりつつ、司なら、何とかするだろうと思っていた
慌てる様子もなく冷静で、余裕綽々に見えたからだ

「みずきとHしたら許さないからね!」

「滋、どうしてそうなる?」

「西門さんも、変な事いうよね?婚約したんだよ
 当然、みずきが迫ってくるでしょ?
 おまけに妊娠しました!とか言いかねないよ、あの女」

「あるあるだな・・・司、あの女とやったら最後だと思え
 お前の逃げ道はなくなるぞ」

「しねぇーよ!総二郎じゃあるまいし
 それにしても、お前ら良く食うよな・・・人の気も知らねぇで」

「腹が減っては戦はできぬって言うだろ?
 ちゃんと食わねぇと頭もまわんねぇぞ!」

あきらが諭すように言った

親友達を呼んだのは、一人でいると居たたまれないからで
何も出来ないと申し訳なさそうに詫びる彼らの存在は
司にとって心強かった
総二郎、あきら、滋は、帰り際、激励の言葉をかけ

「資金調達は無理だが、そのほかの事なら何でもする
 巻き込んで迷惑かけるとか、そう言うのは無しだぜ」

ぽんと司の肩を叩いた総二郎も心配顔で呟いた

「ああ・・・ありがとう。滋。あいつの相談相手に
 なってやってくれ」

「任せて!司も、無理しないで」

最後に部屋を出て行こうとした滋を呼び止め声をかけた

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つくしと類は、サイフォンを買いに珈琲豆専門店を訪れていた
種類も色々あり、どれを買おうか迷っていたら
店のオーナから、HARIOを勧められた
1921年に創業した耐熱ガラスメーカーで
サイフォンをはじめドリッパーやサーバーなどを取り扱う
コーヒーグッズの定番的メーカー
卓越した技術力を持つメーカーとして世界的に評価が高く
コーヒー器具にもその技術力を生かし
デザイン性の高さも魅力のひとつだと説明を受けた
つくしは、即決して購入。コーヒーミルも揃え
サイフォンが入った紙袋を大事そうに抱えて店をでた

「司に、おいしい珈琲を飲ませてあげられるね」

「使い方わかるかな?」 

「大丈夫。散歩切り上げて早速試してみる?」

「そうだね!花沢類は、いいの?」

「何が?」

「折角のお休みなのに行きたいとこあったんじゃない?」

「別にない。それに俺も、すぐ試してみたくてなったからさ」

類も同じサイフォンとミルを買い
お揃いだと知れば、司がやきもちを焼きそうだと
笑いながら話、タクシーで帰る事にした
散歩終了!今から帰る
車内で司にメールを送る
俺も今日は、仕事になんねぇから帰ると返事がきた
それからの司は大変だった、マスコミに気付かれないように
裏口から脱出し、それでもしつこく追い回され、
自宅を知られるのはまずいとカーチェイスを繰り広げて
マスコミを巻いて帰宅したのは午後7時をまわっていた

つくしと類は、帰宅して、珈琲を淹れていた
初めて扱うにしては、まずまずの出来映え
紅茶派だったつくしも、珈琲派に変わりそうだと笑い
お昼は、以前、類に貰った冷凍ピザで済ませた
今から帰ると連絡が来た司は、なかなか帰ってこない
どこにいるの?とメールをすれば、追いかけられてると
返事がきた

ドアフォンを鳴らさず鍵でドアを開け
疲れきった司が帰ってきた。玄関まで珈琲のいい香りが
漂っている。つくしが気になって仕方なかったのに
珈琲の香りが、司の心を軽くしてくれたような気がした

「お帰り!」

いつもと変わらない笑顔でつくしが迎えてくれた
何とも言えない感情の波が押し寄せてきて
気がつけば、つくしを抱きしめていた
つくしも、司の背中に手を回し、無言でスーツの上着を
ギュッと握りしめていた
類は、邪魔にならないよう、そっと部屋を出て行った

「心配させたな・・・」 

つくしの髪を撫でる司は、いつも通り優しかった

「話がある・・・大事な話だ」

「うん」

ソファに坐り、つくしを膝の上に乗せて話し始める

「ニュース見たか?」

つくしが無言で、コクリと頷く

「今から話す事は言い訳だ。でも訊いてくれ
 うちの会社は今、岐路に立たされてる。業績悪化してて
 何万人もの社員を抱えてるから、潰す訳にはいかねぇ
 事業を立て直す交換条件のひとつがみずきの婚約なんだ
 俺は、あの女と結婚するつもりはない
 1年で、筋道つけたら、道明寺を去るつもりだ
 それまで離れて暮らすことになるし、
 嫌な話も耳にするかも知れない。必ず迎えに来るから
 待っててくれるか?」

つくしは、また黙って頷いた

「お前の生活は困らないように段取りしてある
 心配しなくても大丈夫だ。明日食うのも困るって
 状況じゃねぇから」

「あたし、働く・・自分の事は自分でするから心配しないで
 あのフレンチレストランで働かせてもらえないかな
 掃除でも雑用でも何でもするから」

「うん・・・あの店は、お前に任そうと思ってた
 総二郎、あきら、類、それに滋がサポートしてくれっから
 困った事があったら何でも相談しろ
 ただし、条件がある。柴崎が俺の代わりにお前を守ってくれる
 あんなオッサンだけどよ、頼りになる男だ」

「司とは逢えないの?」

「いや・・・それは何とかする」

大きなため息をつき、つくしの小さな手を握りしめていた

「もう一つ、お前に謝らなければならない事がある」

「なに・・・」

「うん・・・」

「話して。あたし、そんなに弱くない」

「そうだったな。お前の両親の事だ・・・
 お前の両親を追いつめて死に追いやったのは道明寺家だ
 ボディガードをつけるのはその為だ」

「あたしのほんとの両親のこと知ってるの?」

「ああ、偶然知った。お前の父親は、俺の親父の弟・・」

「えっ・・・」

「俺ら、血が繋がってんだ。いとこ同士だからな
 お前も、道明寺家の人間だ。父親の名前は、道明寺望
 母親は、三上琴美って言うんだ。今の俺らみたいに
 結婚を妨害されてた。いつか見せてくれた時計
 あれは、お前の父親の物だよ。俺にとっては、叔父にあたる
 凄く可愛がってくれてた」
 
「どんな人だったの」

「うん・・・おおらかで、優しくて、物知りで、人望があった
 俺の憧れの人だ。叔父が、父親だったら良いのにって
 いつも思ってた」

「お母さんは」

「母親の事は、俺も良く知らなねぇんだ
 ただ、道明寺家が追いつめて死に追いやった
 だからよ・・・許せないと思うなら
 俺のことは待ってなくていい・・違う幸せを見つけてくれ
 黙ってて、すまない」

「ううん。教えてくれて、ありがと」
 
泣き笑いなような顔をして
司の膝から離れると、つくしは、とびきりの笑顔をみせた

「あのね、今日、花沢類と散歩して買い物いってさ
 じゃーん!これ買って来ました!
 これからは、おいしい珈琲が飲めるよ!
 まだ上手に淹れれないけど・・・・飲んでみる?」

「うん」

何が何だかわからなくなったつくしは、
気持ちを落ち着かせる為、珈琲を淹れに行った
司はいつも正直に自分の気持ちをぶつけてきた
初めて逢った時のあの不機嫌さも、
当時の彼の正直な気持ちだった
不器用で、繊細で、いつも何かに苛立っていた
自分より多く色んなものを抱えてると今更ながら
気づき何もわかってなかった事をつくしは後悔した
目の前にある現実は別れ。司が戻ってくるかもわからない

「あっ」

珈琲を淹れるつくしを司が後ろから抱きしめていた

「あたし、待ってる10年でも、20年でも、司の事、待ってる」

サイフォンのアルコールランプの炎を司が蓋をして消した

「これはいただけねぇな。危ない。お前、そそっかしいからよ」

「これがあるから美味しい珈琲が・・・」

言葉を遮ると、つくしを羽交い締めにして
覆いかぶさると息が止まるような
感情的なキスをしてきた
二人して床に倒れ込み、つくしの着ていたTシャツを
たくし上げ、絹のように柔らかな白い肌に顔を埋めた
司の甘いコロン香りがつくしの躰に擦り込まれてゆく
互いの体温がとけあうと司の癖のある髪が、
つくしの頬を撫でるように行ったり来たりする
今まで見たことも無い、つくしの官能的な瞳と唇に
刺激され、司の求愛は激しさを増した
つくしは、司の大きな躰を赤ん坊のように抱きしめて
狂うおしいほどの彼の心叫びを受けとめていた
大丈夫・・・大丈夫だから、途切れ途切れに聴こえる
吐息混じりの甘ったるい声が、
司を快楽の世界へ引きずり込んでいった
ぽたりと落ちた司の汗が、つくしの睫毛を濡らすと同時に果てた
つくしは、司の髪を撫でながらきつく抱きしめていた

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ここからは拍手コメントお礼となります

y*******a様

ご無沙汰しております
コメント頂き、ありがとうございました

揺れましたね。お怪我がなくて良かったです
あの日、一瞬、何が起こったのかわからないほどで
揺れが止まってから怖くなりました
卒業に向けて一直線ですが、もうしばらく続きそうです
お心遣い頂き、ありがとうございますm(_ _)m
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