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鍾愛 98

リビングで押し倒され、ふたりして
肌を重ね合う幸福感に酔いしれた
筋肉質で、厚い胸板だった司の
背中に手を回した時の違和感
元々、無駄な贅肉がついていないのに
激務と心労のせいか痩せてる事に気がついた
つくしが、きつく抱きしめると司の瞳が揺れた
甘い戯れが終わり少し飲みたいと司が言い
嗜む程度のつくしも、カクテルで付き合った

「よく着替えあったね」

「ここは、別宅みたいなもんだからな」

ゆくゆくは移住するつもりで建てた
北欧風のログハウス
邸の自室はモノトーンでシックに
まとめられているが、この部屋は柔らかな
インテリアで統一されている
一番の拘りは、蒔きストーブだ
手入れされた夏の庭で、コガタコオロギが
「ビイーッビイーッ」鳴いているのに
二人の話題は、暖炉に灯をともす季節
クリスマスの事だった

「そうだ、プレゼント持ってきた」

「なに?」

「開けてみろよ」

司にしては珍しく、紙袋を大事そうに持っていて
気になっていた
綺麗にラッピングを施された正方形の大きな箱
スルリとリボンをほどくと、
ガラスケースに入ったシロツメ草の花冠が現れた

「ブリザードフラワーにしてもらった」

一緒に訪れた公園で、司が作ってくれた花冠だった

「素敵!」

「お前が作ってくれた指輪もあるぜぇ」

「開けてもいい?」

「ああ」

つくしの嬉しそうな顔を肴に、司はウイスキーを
飲んでいる

「ちゃんと食べてる?」

「お前、そればっかだな」

「痩せたんじゃない?」

「最新、筋トレサボってっからな
筋肉ってすぐ落ちっちまうよな躰は、正直だ」

「ホントにそれだけ?」

「そうだよ。他に何があんだよ」

「なら良いけど▪▪▪▪」

「なぁ、広野真一って男知ってっか?」

「えっ?知らないけど、どうして」

「いや、何でもない」

もしかしたらと思いつくしに訊いてみたが
知らないと答えた。あの不動産屋の事など
すっかり忘れていた
barミスティで広野に渡されたのは司の名刺
一度ゆっくり話がしたいと書き添えていた

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西田はしばらく広野の後を追ったが
慣れた柴崎と違い、下手な尾行は
やぶ蛇になりそうだと夜の銀座を離れた
海藤が、まだ現役だった頃、司のお供で
銀座に通ってた時期、海藤と馴染みの店が
かぶって何度か出くわした事があった
司も足が遠退き、海藤も引退してから
夜の街で見かけなくなったと風の噂で訊いていた
情報収集の為に、舞い戻って来たのか
暗黒街の怪物と呼ばれていた男は、
その名が知れ渡っていても表舞台に登場する事は
ほとんどなく、その為、名前は知っていても
顔は、ごく僅かな人間しか知られていない
広野が人違いしても、なんら不思議な事ではなかった

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「そろそろ寝るか?」

「そうだね。先に行ってて片付けるから」

テーブルに置かれたグラス、つまみが入ってた皿を
つくしが手際よく片付けていく
その様子をソファーに座って司が眺めていた
思えば、自分が一番幸せだったのは3歳の時
叔父望と過ごしたかけがえのない日々だった
つくしと出逢い、止まっていた時間が動き出した
独特の雰囲気を纏い、本来の彼はそうではないのに
司の性格を形容する言葉としてのエキセントリック
と他者から表現される事が多かった
道明寺司と言うキャラクターを演じている
気づかせてくれたのはつくしだった
司が望んでいる幸せは手が届きそうで
届かなかった

「なに?」

「手伝おうか?」

「いい▪▪いい。明日、朝ごはん食べるでしょ?
たいしたもん作れないけど」

「食べるよ」

幸せの欠片を見つけた
人が聞けば、らしくない陳腐な言葉だと
笑われそうなのに、自分の為に明日の朝食を気にかけてくれる
つくしの何気ない言葉は、
司の心を満たすのに十分だった
リビングの明かりが消えたのは午前0時を過ぎていた

ベッドの中で司の胸にもぐり込む
つくしが一番安心できる場所だ
明日になればまた一人寝になってしまう

「もう少し話をしていたい」と、言っていたのに
返事が返って来ない

「寝ちまったか▪▪▪▪」

腕の中で小さく丸まったつくしの
髪を撫でながら、司は、なかなか寝つけずにいた
みずきの事をどうにかしなければ
気が重いが明日会って話をするしかない
彼女を排除しても何の問題解決にもならない
美しく光輝くダイアモンドはいらない
あたたかく降り注ぐ陽の光が欲しい
素朴な雑草は、朽ち果ててがらんどうになった
廃心に、色とりどりの花を咲かてくれた

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翌日

もしかしたら連絡は来ないかも知れないと
思っていた広野から電話があった
司、つくし、広野、海藤は、必然の出逢いによって
一本の線で繋がっていた
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