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鍾愛 101

「あの小娘、会長に向かって何て失礼な」

みずきが帰った後
怒りをあらわにするのは、海藤の腹心、一之瀬だ
海藤に拾われ命拾いした過去を持ち
忠誠心を誓っている男だった
190センチの長身に、スキンヘッド。強面の風貌故、
プロレスラーに間違えられる事もしばしばで
ボディーガードとしても一躍買っている
みずきが居る間、同席して睨みを利かせ
好き勝手に感情のまま、まくしたてる彼女に
イラついていた

「いいじゃないか。面白いだろ?
私の事を完全にヤクザの親分と勘違いしている
昔、椎名にメガバンクの融資を取り持ったことがあってな。
あの時は儲けさせてもらったよ」

「だからと言って馴れ馴れしい▪▪▪
どうなさるおつもりですか?」

「あのお嬢さんの望みは、牧野つくしを
目の前から消し去る事だ。父親の会社と引き換えにしてでもな。
約束したからには手加減なくやらせてもらう」

海藤の瞳が息を吹き替えした様に光った

=======

午後8時仕事を終えた司が広野との待ち合わせ場所
barミスティの扉を開けた
広野は先に来ていて、いつものカウンター席で飲んでいる。
客層の良さからか酒場特有の喧騒もなく
静かな時間がながれている
みずきの父敬一が馴染み客でなければ
自分も、このbarの常連客になっていただろうと
思わせる程、心地良い店だ

「同じものを」

広野が飲んでいるウイスキーに視線を落としてから
司が横に座った

「かしこまりました」

広野は司と視線を合わせる事なく前を向いたまま
ウイスキーの入ったタンブラーを傾けていた

「お電話頂き、ありがとうございました」

「いつも、ひとりで飲んでると退屈でね
たまには、誰かと語らいたくなるもんです」

そう言って口づけするように
タンブラーの縁に唇を重ねた

「どうです。結婚準備は進んでますか?
あんな美しい女性を娶られるなんて同じ男として
羨ましい限りです。人の欲求は無限です
物欲もさることながら、性欲もまたやっかいな衝動
特に男は自制心が乏しい。イイ女を見たら
劣情に負けて、抱きたくなる
道明寺さんも、普通の男だったんですね。
あんな可愛い彼女を捨てて、若くて美人の
女を選んだのですから」

嫌味と言う祝福を浴びせられ
それでも司は怒る気になれなかった

「捨てたわけではありません」

「二股ですか」

「違います。彼女と結婚するためです」

「なるほど▪▪一度ゆっくり話がしたい▪▪
あのメッセージの意味はなんですか?」

「単刀直入に訊きます。
あなたは何者なのですか?」

「私自身もよくわからない。居場所が何処にあるのかも見つけられずにいる。
芸能人がよく使う旅人って奴ですよ
広野真一と言う仮の名で生きていくことを選んだ
その時点で、私の人生は終わったんです」

「偽名と言う事ですか?」

「他人によって与えられたと表現する方が適切かも知れない
親がつけてくれた名前も
それまでの人生も捨てろ
広野真一として生きていけと言われました
私もそれに甘んじた。自ら選択したのだから
恨み言を言うのも筋違いなんですがね」

淡々と語る広野の横顔はまるで
過去の出来事を懐かしむようだった
探るような言葉を投げかけて来た
広野は、ようやく司に視線を向け
タンブラーを手に持ち乾杯のポーズを取った

「うちの実家は商売をしてましてね
私も、跡を継ぐつもりでした
親父は職人気質な技術屋
無口で、曲がった事は大嫌い
昭和の頑固親父そのままの人でした
時代が移り変わり自分の仕事に
誇りを持ってた親父は信念を曲げなかった
その為、少しずつ業績悪化していきました
従業員に給料を払うため資金調達に奔走して
私達家族も、生活が一変した。そんな時
道明寺財閥が、工場のある土地を譲って欲しいと
言って来たんです。それはただの口実
欲しかったのは、特許ですよ
横取りするつもりで追い詰めて行った
それに気がついた、あなたの叔父望さんが
親父の会社を守るために尽力してくれました
はじめは全く信用してなかった親父も
望さんに信頼を寄せるようになった
彼のお陰でなんとか再建の目処がたったとき、
狙ったように不渡り手形を掴まされた
全部仕組まれていたんです。道明寺にね▪▪▪」

「もしかして▪▪▪三上さんじゃないんですか」

「えっ。どうしてそれを▪▪▪▪▪」

驚きのあまり、広野は、数秒間、言葉が出なかった


「妹さんの名前は琴美」

「そうです。なぜ、琴美を知ってるんです」

今まで静かだった男が
追及するような口調に変わった
バーテンダーは、目の前のカウンターから
席を外すように隅に移動し別の客と話しだした
落ち着きを取り戻すと、ポツリポツリと
語り始めた

「一家離散・・・・・私と琴美は
別々の親戚に預けられる事になって
私は、跡継ぎが居ない遠縁の親戚の養子になった
三上修一は、もう居ない。これからは広野真一として
生きていくよう養父母に釘を刺されて
妹との連絡は一切取らないようにと言われたんです
遠縁と言っても血は薄くて他人に近い
その家は資産家で、大学を出て養父の経営する
中規模の証券会社に就職したんです
跡継ぎとして
両親と琴美の事は気になりましたが
いつか必ず親父の会社を再建する
それまでの辛抱だと言い聞かせてきた
なのに届いた知らせは
両親の死と琴美が行方不明になった事
自分だけが何も知らずに贅沢三昧して生きてきた
養父母が亡くなり、やっとしがらみから
解放されたのが三年前
会社を売却して、琴美を探したら亡くたってました
琴美が亡くなった事を知ったと言っても最後まで確認した訳じゃない
怖くて出来なかった。この世にはいなその事実たけが重くのし掛かってきました
私が、両親も、琴美も見殺しにしたんです」

「琴美さんは生きてます」

「まさか▪▪▪▪」

「琴美さんと、叔父の血を受け継いだ娘がいます」

「子供。子供がいたのか▪▪その子は、
今、どうしてる」

「広野さんは、すでに会ってます」

「えっ?会ってる▪▪▪▪▪」

「娘の名は、牧野つくし」

「あの子が、琴美の▪▪▪▪」

「なんの巡り合わせか、私は、貴方の姪でもあり
叔父の娘でもある、牧野つくしと出逢った
貴方が復讐したいくらい憎い道明寺の血を
受け継いで」


「望さんが父親▪▪▪」

「そうです」

動揺した気持ちを落ち着かせるように
司に断りを入れてから、カウンターに置いた
タバコに火をつけた

「琴美が望さんに恋心を持っていたのは知ってました
年も離れてるし、童顔で子供ぽくて
とても恋愛対象になるとは思いもよりませんでした」

「叔父は、琴美さんと結婚する為
N.Yの仕事を片付けたら必ず迎えに来ると
約束してたみたいです。なのに突然この世を去った」

「なぜ」

「死因は自殺で片付けられてます
病死にするには不自然だったからでしょう」

「殺された▪▪▪」

「少なくとも私は、そう思っています」

「誰が、何のために」

「わかりません。そのうちハッキリするかも知れない」

「定めと呼ぶには、あまりにも酷だ
望さんと琴美は結ばれなかった。
そして今の道明寺さんとつくしも同じ運命を
辿っている。こんな事ってあるのか▪▪▪」

「私は、必ずつくしを迎えに行きます
自分自身の為でもあり、叔父と琴美さんが
手に入れられなかった幸せの為にも
協力してもらえませんか?無理にとは言いません
広野さんの心を掻き乱す事にもなりかねない」

「つくしは、何処にいるんですか?」

「安全な場所に居ます。ボディーガードもつけています。
ご心配には及びません」

「ありがとう。協力させてくれ
二人の供養になるのなら」 

広野は即答した。ただひとり残された肉親がいたことを喜び
妹琴美が、少しの間でも幸せだった事を知ることが出来た
司は、今は、つくしに会いに行かないで欲しいと伝え
二人で呑みながら、司が知らない、
望の話を広野から聞かされ胸が震えた

海藤は、みずきとの約束を果たすため
一ノ瀬を使って、つくしがいる、
コントラトゥールに予約を入れる様、
指示を出していた


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すでに101話!もう少しで完結予定です
最後までお付き合い頂けたら幸いです
宜しくお願い致します( `・∀・´)ノ ヨロシクー
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Comment

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  • Ranmaru*
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Re: No title

 ま**ん様

おはようございます。お返事が遅くなりました(*/∀\*)  
コメント頂き、ありがとうございます
海藤も、筋の通った男
ようやくラスト章まで来れました
最後までお付き合い頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します( `・∀・´)ノ ヨロシクー

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