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鍾愛 105

消えたら、司を助けてやる
海藤の言葉が、つくしの頭から離れなかった
嘘が下手なつくしは、司と柴崎に気づかれないよう
いつも通りの振る舞いをして
海藤の真意を確かめる為
意を決し計画的に家を出た 
タクシーを予約し店の近くで待たせておいた
真夜中のチェックインでも対応してくれる
ビジネスホテルで一夜を過ごし
朝10時半。海藤邸を訪れた。迷いがないわけではない
勢いでここまで来てしまった感は否めない
司のシャツとネクタイと花冠は、
勇気を与えくれるお守り
小さなバッグに詰め込んで、深呼吸してから
インターフォンを押した

庭に放たれたドーベルマンが吠えている
侵入者を防ぐ目的で飼われているのだろう
それだけでなく愛情を注がれているのがわかる
毛艶がよく筋肉質で精悍なのは
世話が行き届いている証拠だ
門扉の前で吠えたてる犬達を掻き分けるようにして
海藤が現れた

「必ず来ると思っていたよ。入りなさい」

言われるまま、後を着いて行く
家は、主に似てくるものなのか?
道明寺邸とは違う冷たさを放つ屋敷だった
一之瀬が玄関扉を開ける姿に、
つくしは違和感を覚えた。何故なら
190cmある大男が軽々と
開けると思っていたのにドアの取っ手に力が
入っているように思えた

「このドアは、鋼鉄の鉄板を埋め込んでいてね
窓ガラスはライフルも通さない防弾ガラスだ」

なぜそこまでと思ったが理由を訊かない事にした
リビングに通されソファーに座るよう促される
海藤は自宅に居ても身なりはきちんとしていて
薄いサーモンピンクのシャツに、
きなり色のズボンをはき
余計なシワが寄らないのは
オーダーメイドだからだろう。年齢のわりには
センスが良くお洒落だった
住み込みの家政婦が香りのいいお茶を運んできて
つくしの目の前に置いてくれた

「吸ってもいいかね?」

テーブルに置かれたシガレットケースを
手にして訊いてきた

「はい・・・」

ここは、彼の家だ、
つくしが嫌と言えるはずもない
静かな空間で、ぼっとライターの炎の音だけが
耳に入ってきた

「あの・・・消えるってどう言う意味でしょうか?」

ふぅーっと吐いた紫の煙が煙幕のようになって
海藤の顔にモザイクをかける

「一言で言えば、お嬢ちゃんが社会的に抹殺される
そう言う意味だ。司君には二度と逢えない
君は、この屋敷で私と暮らすんだよ
籠の中の鳥として私の傍でさえずる
何かを手に入れるには、それ相応の対価が必要だ
金であったり、約束であったり、
価値のある物であったり・・・・
司君の借金の肩代わりする対価として
彼が一番大事にしている、君を私が貰う」

海藤が吸うタバコの匂いが鼻をつき絶望の香りがした

「これで、椎名の娘との婚約も受けなくてすむだろう
お嬢ちゃんは、人は移ろうから新たな出逢いがあって
再生するといったね。男と言うのは厄介でね
一人では生きていけんのだよ
お嬢ちゃんが消えて時がたてば、司君は
君の事などすっかり忘れて、新たな女と
恋に落ち所帯を持つ
お嬢ちゃんがいなくなって司君が
壊れても癒す女と出くわせば再生する
それとも、司君に限ってそんな事はないと
言うのかね?馬鹿馬鹿しい
人は打算の上で成り立っている夢見事で飯は食えん
どうする?それでも司君を助けたいか?」

「・・・・・・・・」

返す言葉もなく、つくしは、うつむいて
唇を噛むしかなかった

「帰りなさい。私は覚悟が決まったら来なさいと
言ったはずだ」

「ほんとに・・・本当に彼を助けて下さるんですか?」

「私は言った事は守る主義だ」

海藤の瞳は、あの時とは違う光を放っていた

「宜しくお願いします」

「本当に良いんだね・・・・
司君と二度と逢えなくなっても」

「はい・・・」

「わかった
一之瀬、お嬢ちゃんを部屋に案内してあげなさい」

「かしこまりました」

全て想定内。海藤の思惑通りのシナリオが
進みはじめた

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「この部屋をお使い下さい
必要な物があれば、家政婦の湯川さんに言いなさい
外出は、制限されるが出来ない訳ではない
ただし、必ず誰かが監視役として付き添う
そのつもりで」

一之瀬の事務的な言葉は冷たく優しさの欠片もない
つくしの部屋は、屋敷の大きさに比べたら
こじんまりとしていた
ベッド、クローゼット、ソファーにドレッサーが
あって、海藤の好きなアンティーク家具で
揃えられている
一之瀬がドアを閉めた瞬間、つくしの目から
涙が溢れた

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一之瀬が海藤の居るリビングに戻ってきた

「三島組の動きはどうだ?」

「これと言って変わりありません
足がつかないように、アルバイトで雇った
デコイ(おとり)を数人使ってます
どうしてそこまで肩入れなさるのですか?
危険すぎます」

「私なりに筋を通す・・・それだけの事だ」

「あの娘は、どうなさるおつもりですか?」

「どうするかなぁ・・・・
あのお嬢ちゃんの為に司君が
どこまで踏ん張れるか・・・・
近々、彼が凄い血相で、この屋敷に
乗り込んでくるだろう」

何を考えているのか?一之瀬は、海藤のやろうとしてる事が理解できない
彼はただ、言われたことを
忠実に守ることしかなかった

======
「やっと繋がった。忙しかったの?」

正樹の事を伝えるため、広野が司の携帯に
何度かけても出なかった

「お詫びしないといけない」

繋がった電話から聴こえてきたのは
力ない言葉の司の声

「つくしに何かあったのか?」

「はい・・・姿を消しました」

「えっ?誘拐されたのか?」

「いいえ、自分から出ていきました」

「なぜ・・・・」

「私に迷惑がかかると思ったんでしょう
探しているのですが見つかりません
広野さんに大丈夫だと言っておきながら
この様です。合わす顔もない」

「心当たりは?」

「しがみつぶしに当たってます
今のところ有力な情報はありません
連絡できずに、申し訳ありませんでした」

疲れきった司の声に、こっちも探してみるから
気に病むなとしか広野には言えなかった

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「出かける」

「どちらまで」

「海藤のところだ」

つくしが消えて1週間がたつ
宿泊施設に電話したところで個人情報等
教えてくれる訳でもなく
つくしが使ったタクシー会社まではわかったが
その先の足取りが掴めない
様子が変わったのは、海藤が来てからだ
西田と柴崎に告げて、一人で行くと出ていった

「来たな。思ってたより時間がかかったな」

インターフォンが鳴るより先に犬達が騒ぎだし
海藤は門扉に設置された監視カメラの映像で
司の姿を確認していた

「道明寺です。海藤さんにお会いしたい」

「アポなしではお会い出来ません」

「なら、強引に入らせてもらう」

「会長、どうしますか?」

一之瀬が、お伺いを立てて来た

「好きにさせればいい。どうするか見ものだからな」

見上げる程、高い門扉の下には4匹のドーベルマンが
牙を剥き出して唸り声をあげている
スーツの上着を脱ぎ捨て、それなりの高さのある
格子状になった門扉をロッククライミングする要領で足場を確かめながら器用に登っていった
敷地内に入ったかと思えば、司の苦手な犬が待ち受けている

「シッシッ。あっち行け!うるせぇなぁ
お前ら、咬むなよ!」

犬に威嚇しながら降りていく司の様子を
海藤は楽しんでいる

「ち、ち近寄るなぁ。舐めた真似しやがると
俺も本気だすぜぇ」

「それは、困る。我が家の大事な息子と娘達だ」

いつの間にか、海藤が庭に出てきて、
犬達に犬舎に戻るよう指示をだしていた

「せっかくの色男も犬には勝てんか」

「返してもらおうか」

「何をだね」

「つくしだよ」

「うちにはおらん。言いがかりだな
ここではなんだ。入りなさい」

リビングに通された司は、つくしの痕跡を探すように
辺りを見渡していた

「君には立派なフィアンセがいるのに
あのお嬢ちゃんも諦めきれんのか
まぁ、女囲うのも男の甲斐性ではある」

「なに言ってんだ?みずきと婚約した覚えはねぇ
ガタガタ言って言ってねぇで、つくしを返せ」

「仕方ない、気が済むまで屋敷を探しなさい」

「そうさせてもらう」

「良いんですか?会長」

「私の身の潔白を証明するにはそれしかない」

「クソガキ、調子に乗るなよ」

一之瀬が、威圧をかけた

「それは、こっちの台詞だ
海藤さん、あんたとっくに引退したはずだよなぁ
それを、未練がましく舞い戻ってきた
往生際が悪かねぇか?」

「会長に何て言い種だ言葉を慎め」

「おめぇーにとっちゃぁ会長でも
俺にしちゃあーただの爺さんなんだよぉ」

「君の大切なお嬢ちゃんが見つからなかったら
どう落とし前をつける気だ?」

「落とし前?あんたの好きにしていいよ
どけ、大男、邪魔だ!」

一之瀬を押し退け、捨て台詞を吐き
リビングを出ると、ひと部屋ずつ確認してゆく

「つくしぃぃぃ。つくしぃぃ
いったい、なん部屋あるんだ?」

「面白い男だ。父親の誠より大物だな」

「良いんですか?好き勝手させて」

「どうせ見つけられん」

司の声が聴こえているのに、ここに居ると
答えられないつくしは、早く帰ってと耳を塞いでいた

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ここからは、拍手コメントお礼となります

と**も様

こんにちは。
拍手コメント頂き、ありがとうございます
毎日暑いですね。外に出るのも嫌になります
キラキラした夏到来を心待にしているのは、
青春真っ盛りな若者だけかも?

卒業は、けじめとして書き残した話を完結させてからになります
なので、まだ二次に居座りますが
もしかしたら挫折して逃亡するかも知れません
最後までお付き合い頂けたら幸いです
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