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鍾愛 108

つくしの一日は規則正しく
朝6時には目覚めて、身なりを整え
ダイニングに降りていく
着の身着のまま屋敷まで来たが、
家政婦の湯川が、必要な物を買ってきてくれたお陰で
困ることはなかった
食事は、海藤と一之瀬と一緒にとり、
三人に会話はなく、広いダイニングは、
いつも静かだった
ここ数日、つくしの体調が今一つで
食も進まず、気だるい
暫く外には出れない。庭にも出るなと言われ
司とも連絡を取ることも許されてない
外の世界がどうなっているかもわからず
考えないようにしても、夜になると不安になり
声をころして泣いていた

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「どうした?口に合わなかったか?」

見れば、夕食に殆ど手をつけていない

「いいえ。夏バテかも知れません
折角、作って頂いたのに残してしまって、すみません」

「先に休みなさい」

「そうさせて頂きます」

「湯川さん、部屋まで連れってやってくれ」

「はい。参りましょう」

つくしの手を取り、支えながら席を立つ手助けをしてくれた
家政婦の湯川は、40代後半
海藤の愛人かと思っていたら、そうではなく
今は亡き妻の話し相手として屋敷に来たと
本人の口から聞いていた
派手な感じもなく、ごく普通の女だった
必要以上な事は喋らない。だから、家政婦として
雇われたのだろう。つくしも、要らぬ事は言わない方が
良いことくらいわかっていた

「何かありましたら、お呼び下さい」

「ありがとうございます」

胃の辺りがキリキリ痛む
ベッドにもぐり込み、頭まで布団をかぶると
忍ばせていおいた、司の匂いがついたワイシャツを握りしめ
小さく丸くなった

「一之瀬、明日、医者を連れて来てくれんか
 デリケートな事が原因かも知れん。院長でなく
 娘の女医にしてくれ」

「かしこまりました」

腫れ物に触る様な気の使い様に
長年仕えてきた自分より、つくしの方が上なのかと
一之瀬は、面白くなかった

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翌日

体調が悪いとつくしは姿を見せず
一之瀬は言われた通り、女医を迎えに行くため屋敷を出た
車をガレージから出し、携帯電話を忘れた事に気がついて
取りに行こうと車から降りた瞬間

「ウッ・・・・・何をする」

通り過ぎると思っていた車の中から
4、5人の男が降りてきて、あっという間に拘束された

「命がけ惜しければ、これ以上嗅ぎ回るなと
 海藤に言っとけ!」

監視カメラで視ていた海藤が門を開き
男達に向かってドーベルマンを放った
低い唸り声をあげながら躙り寄る犬たちに恐れをなした
男達は、慌てて車に飛びのり走り去って行った

「大丈夫か?」

「申し訳ありません。油断していました」

「三島直々に来るとはな・・・・」

「これ以上は危険です。お願いです。もうやめて下さい」

「谷本、お前も一之瀬と一緒に行け」

ボディガードの一人、谷本を呼んだ
一之瀬の心配する声を無視して、犬達の頭を撫でると
海藤は、屋敷に戻って行った


「ったく・・・・会長は、何を考えてるんだ」

谷本が運転する助手席で
一之瀬は、鬱血した首筋を撫でながら、
ヤバかったと大きなため息をついていた

==========

一方、司は、椎名製薬の通用口が見える場所に
柴崎を張り込ませていた
一台のバイク便が入ってきた
顔パスのようで、警備員室の前を素通りして
インターフォンを押す
しばらくたって出て来たのは正樹だ
バイク便の男はヘルメットを脱がず、正樹に何かを渡している
それと引き換えるように、男にも何かを渡した

「今、バイク便が来ました。物々交換したようです
 後を追いますか?」

「追ってくれ」

要件だけ伝える電話を入れた後、柴崎は、男のあとを追った
着いたのは古びたマンション
幸い通りに面してドアが並んでいるのが見える
3Fの一番奥の部屋に届けたようだった
バイク便のボックスは社名も入ってない
男がバイクに跨がり走り出すと、絶妙な距離を保ちながら
引き続き後を追った
30分程走ると、小綺麗なマンション前で停まった
オートロックで中には入れなかったが、
身バレするのを恐れてか、男は一度もヘルメットを
脱ぐことはなかった
自宅なのか?事務所なのか?確かめる為
しばらく張ってたが男は出て来ず、引き上げることにした

===========
海藤邸では、女医が、つくしの
メディカルチェックに訪れていた

「この度は、ご愁傷様でした」

「妻が、色々、世話になったね。ありがとうと
 院長に礼を言ってたと伝えておいてくれ」

「父の診察でなくても宜しいんですか?」

「今日は、私ではない。大事な客人の診察をお願いしたい」

末期癌に冒された海藤の妻が緩和ケアへの入院を拒み
長年、付き合いのあった開業医に在宅ケアをお願いしていた
その妻も亡くなり、高齢の海藤の体調管理の為
定期的に、院長が往診に来ていた
メディカルチェックに来たのは院長の娘
女同士の方が良かろうと海藤の気遣いだった

突然やって来た訪問者に、戸惑を隠せないつくしが
リラックス出来るよう、世間話をしながら、
体調不良や、不安に感じている事を聞き出した
採血、心音、脈拍、血圧を計り、
念の為、尿検査もする事になった一通りチェックした後

「結果は、後日になりますが心配しなくても大丈夫」と

優しく声をかけてから部屋を出た

「おじ様・・・・」

「終わったか。どうだった?夏バテと本人は言っておったが」

「それもあるかも知れません。彼女、妊娠してます
 事情がありそうなので、動揺すると思って
 その事は、話してません」

「そうか・・・助かったよ」

「なるべく早く、詳しい検査をお勧めします」

「わざわざすまなかったね・・・司君の子か・・・」

「えっ?」

「いや、なんでもない」

その日は、一歩も部屋からつくしは出てこなかった

「一之瀬、早急に段取りしろ」

「会長、本気ですか」

「これは偶然ではない。必然だ。長い間、待っていた甲斐があった」

海藤は、納得した様に静かな笑みを浮かべた
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  • Ranmaru*
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Re: No title

 あ*み様

はじめまして、おはようございます
お越し下さりありがとうございますm(_ _)m

体調を心配して頂き、ありがとうございます
あ*みさんは、夏バテしてらっしゃいませんか?
更新せねばと思いつつ、バタバタして放置になってしまってます
来月は、終戦記念日もあり、50年目のお話も完結させたいと
思っております
最後までお付き合い頂けたら幸いです

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