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鍾愛 109

こんにちは
お越し頂き、ありがとうございます

私の住んでる地域は台風が過ぎ去りましたが
まだ、風は吹いています
皆様お住まいの地域で被害はなかったでしょうか?
今から九州地方の風雨が強まると予報が出てますね
大きな被害が出ませんようにお祈りしております


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「経過報告だけして頂戴」

楓は、社長室にいた
N.Yには戻らず滞在しているのはメープルの自室
必要以外の事は報告しなくていいと
秘書の山崎に無表情のまま言った

「牧野つくしとは別れたようです」

「間違いないんでしょうね」

ソファに坐り、黙々と書類に目を通していた楓が
一瞬だけ、顔を上げると疑うような視線を投げかけてきた

「はい。確認済みです」

山崎も、淡々と答える
いつしか、西田が、なぜそこまで
山崎を毛嫌いするのかと芝崎に訊いたことがあった
血の通った人間に思えないからだと返ってきた
楓と山崎は似ているとも言った
何者かわからない薄気味悪さを感じるらしい

楓のやり方についていけなと思っていた西田は
数年前、退職願を書いたことがあった
理由も伝え、激怒されるかと思っていたのに
楓らしからぬ熱心さで慰留され、それなら
司の秘書になって支えてやって欲しいと懇願された
どこで知り合ったのか、いつの間にか山崎が
西田と入れ替わる様に楓の秘書になっていた
余計な詮索はしないに限る
仕事の拠点は、それぞれ別だ。自分は、司の秘書として
仕事を全うするだけ。山崎のことを柴崎ほど
嫌悪感を感じなかったのは、興味がなかったからだった

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資金提供を申し出る人物がいると山崎が話を持ってきたは
半年前の事。決して怪しい取引でなく、
実在する投資家だったことが楓の心を動かした
プライドが高い楓が素直にM&Aを受け入れたのは
裏取引があっての事。椎名製薬と業務提携するふりをすれば良い
信憑性を高める為、司とみずきが婚約するのも条件に
盛り込まれていた。調整準備期間は1年
再建の目処が立つのならと、人から命令されるのが
我慢ならない楓も、渋々、それらの条件を受け入れた
なのに、司は、みずきを冷たくあしらい
つくしに熱を上げている。何とかしろと山崎に手を打つように
指示をだしていた。どうやって別れさせたのかは興味はない
彼女にとって大事なのは、プロセスでなく結果なのだ

「そう。ご苦労さま」

珍しく労いの言葉を山崎にかけていた
一礼して、社長室を出ると、廊下で西田とすれ違った
西田は、目礼を投げかけたが、山崎は眼中にないと
言わんばかりに無視をして歩いて行った

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「社内で堂々とブラックビジネスのモトを造るもんか?」

「灯台下暗しって事もあります。純度の高いモノを造れても
 末端まで売り捌く組織がないと儲けにもなりません」

「誰かが、この話を持ちかけたって事か」

「可能性はありますね」

西田と柴崎も疑問だった
正樹は、長男として、跡継ぎとして、
振る舞いには気を付けるよう、父敬一から
常日頃煩く言われていた
司も、正樹には何度か会った事があるが、
あきらが言ってたように彼に対して堅物のイメージしかなかった
広野の話だとクラブの店内は撮影禁止
入り口でボディチェックと持ち物検査があったらしい
柴崎にその事を話すと、
マトリ(麻薬取締官)を警戒してるのかも知れないと言った

「そう言えば、通用口に
 クリーニング屋の車が停まってました」

研究所の白衣を業者が取りに来たのだろう
張っていた柴崎が思い出したように呟いた

「上手いことやって、盗めそうか?」

司が訊いてきた

「白衣をですか?手荒なまねをすれば出来るかも知れませんね」

「もしかしたら、白衣に証拠となる成分が
 付着している可能性があると・・・」

確かめるように西田が、司を見やった

「一番手っ取り早いからな」

下調べをしてから、また報告しますと言って
柴崎は、椎名の張り込みに戻り
司は、つくしの行方を捜す為に、西田と行動を共にした

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「庭に出てはいかんと言ったはずだ」

背をむけたまま、海藤が言う
寂しさと不安を紛らわせるため、吸い寄せられるように
つくしは犬舎に足が向いていた、気がつけば中に入り
犬の世話をする海藤の背中を見つけた
移動しやすいようにキャスターの付いた小さな椅子に坐って
一匹ずつ丁寧にブラッシングをしていた
4匹いるドーベルマンの一匹が、ムクリと起き出すと
つくしの足元まで来て臥せをしてくつろぎだした

「体調は、どうだ?」

「ご心配かけて、すみませんでした
 気分は、少し良くなりました」

「そうか・・・」

「お嬢ちゃんの足元にいるのはフランだ
 その子は、不思議な犬で、人の心の中が
 読めるのではないかと思うことが度々あってね
 私も、随分、癒されている」

しゃがみ込んだつくしがフランの頭を優しく撫でている


「妻は犬が苦手でね、関わることはほぼなかったんだが
 ある時を境に、妻が庭に出るとフランが
 寄り添うようになった。屋敷の窓が開ていても
 決して中に入って来ることが無かったのに
 珍しく、妻の部屋までついていった
 妻が、何度追いはらっても中に入れろと吠えたてる
 仕方なく、入れてやってから、
 フランは片時も傍を離れなくなった、風呂に入ってる間は
 外で待ち、食事中は、足元で静にしていた
 まるで妻を守ってるかのようでね、その事を世話になってる
 主治医に話したら、しばらくメディカルチェックもしていないし
 詳しく検査してはどうかと勧められて、嫌がる妻を強引に
 病院に預けた。癌だった・・・
 もう少し早く、気がついてやってたら・・・
 フランは、妻の体調不良をわかってたんだよ
 麻薬探知犬、地雷探知犬
 警察犬も、犯人の匂いを追跡したり、遺留品の捜索もする
 癌患者の匂いを嗅ぎ分けられる犬もいる
 それは、特別な訓練がな成せる技でもある
 4匹の犬達にはコマンドを教えるトレーニングはしたが
 特別な訓練はさせておらん
 いつもと違う匂いを放つ妻をフランがいち早く気が付いてた
 人間では到底わからん臭気なんだろう
 在宅治療を望む妻は、入院も、手術も拒んだ
 その代わりフランが、妻の体調の変化を吠えて知らせてくれた
 あれだけ犬嫌いだったのに、最後は、私より、フランとの別れが
 悲しいとまで言っておった
 そうやって、お嬢ちゃんの事を心配して
 寄り添ってるフランを見ると、
 何かを感じ取っているのかも知れんな。恐くなければ
 部屋に置いてやってくれないか」

自分の身体の違和感は、つくしが一番良くわかっている
妊娠している事を司が知ったらどう思うのか
それより海藤に知られる方が怖かった
司を助ける話がなくなってしまうのではないか
つくしは、それを恐れていた
海藤は、問い詰めたりすることもなく
体調が悪ければ、フランが知らせてくれるだろうとだけ言って
つくしと一緒に犬舎を出た
海藤が言った様に、フランは、当たり前のように
つくしの傍から離れず部屋までついてきた

「わかるの?あたしね、ここに赤ちゃんがいるの
 司の赤ちゃん・・・・」

お腹の辺りをさすりながら話しかけた

フランは、返事をするようにクゥーンと鼻を鳴らしていた



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