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鍾愛 116

つくしが乗せられたのは、
荷台にも空調設備が備わったトラックだった
僅かな空気穴だけ開けられた段ボール箱に閉じ込められていれば
冷たい風などあたらない。息苦しさと横揺れに
酔いそうになっていたところで、
ビリビリとガムテープを剥がす音がした
つくしは、勢いよく両手で開け顔だけ出すと深い深呼吸をした

真っ直ぐ走っていたトラックが右折したのか?
つくしの身体が傾いて段ボール箱ごと倒れてしまった
這い出す最中、外に出ろと男に言われる
トラックはフードコートから一番遠い場所に停まった
荷台から降りると初狩PAの文字が目に入ってきた
すでに待っていたキャンピングカーに
移動するように言われ乗り込むと休憩も無く、すぐに車は出発した
後ろには、フラン達が乗るトラックが着いてきている
1時間ほど走ると路肩にハザードランプを点滅させた
トラックが停まっていた
つくしを乗せたキャンピングカーは通り過ぎ
犬達を乗せたトラックは、路肩に停まっていたトラックの
すぐ後ろにつけた

「停めて下さい!フラン達を乗せたトラックが来てません」

運転している男に訴えても返事はなく
何事も無かったかのように車を走らせている
高速道路を走った経験のないつくしは、ジャンクションを通過しても
どこへ向かっているのか皆目見当がつかなかった
海藤邸を出て約4時間近くになる。短い休憩を取りながら、
ようやく目的地がわかってきた

「長野?」

軽井沢の案内表示をみて、ようやく気がついた
到着したのは、緑に囲まれた別荘地に建てられた大きな屋敷
表札は上がっていない

「無事到着しました」

運転していた男が報告の為、誰かに連絡していた

「お待ちしておりました」

そう言って出迎えてくれたのは海藤邸の家政婦、湯川だった
1時間後、フラン達を乗せたトラックも無事到着したが
どこで入れ替わったのか違う車で運ばれてきた
もしかして、路肩で停まっていたトラック?
色やナンバーまで覚えていない。腑に落ちないが
フラン達が無事だったことに素直に喜んだ

==========

「もう一度言う。一緒に来ることはない
 残されたお前の人生を良く考えろ」

「何度訊かれても答えは同じです」

海藤は屋敷で、一之瀬と静かなやり取りをしていた
仏間に立ち寄り、妻の仏壇に長いこと手を合わせていた後
ふたりは必要最小限の荷物を持ち地下室に向かった

「行くぞ・・・」

「はい」

夕方4時過ぎ、司を乗せたメルセデスが海藤邸の前に停まった

「こちらに何か御用ですか?」

張り込みしていた30半ばくらいの刑事、田中が訊いてきた

「そうです」

素っ気なく返事を返した司がインターフォンを押す

「はい」

「道明寺です。ここを開けてもらいたい」

「お約束は?」

「ガタガタ言わずに、とっとと開けろ」

屋敷から返事はなく、痺れを切らせた司が
見上げる程、高い門扉をよじ登ろうとした瞬間田中に制止された

「目の前で住居不法侵入させるわけにはいきません」

車内で待機していた柴崎と如月が大慌てで司を止めに入った

「間島さんは?呼んでもらえませんか?」

「知り合いですか?」

「そうです」

面倒くさそうな表情を浮かべると
田中が、間島に連絡を入れていた

「すぐ来ると言ってます」

「司様、待ちましょう」

30程して、間島がやって来たヘビースモーカーの彼の唇の端は
相変わらず咥えタバコ。目を細めて灰色の煙は吐くヤサグレ感は
独特の魅力を放っていた

「先輩の呼び出しとあって、すっ飛んで来ましたよ
 どうしたんです?初めまして、道明寺さん」

柴崎に声をかけて、司の存在に気がついた間島が挨拶をしてきた

「俺のフィアンセが、この屋敷にの中に捕らえられてる」

「ほーう。その根拠は?」

「根拠?この手紙だ。海藤の犬の首輪に挟んであった」

司から手渡されたメモを読む

「犬・・・・」

間島は、ハッとして段ボール箱の事を思い出した

「田中、昼間来たトラックのナンバーを照合しろ」

指示をだし言葉を続けた

「道明寺さん、令状なしにガサイレする訳にはいかんのですよ
 任意と言う手もありますが、詳しく話を訊かせてもらわなければ
 こちらとしても動きようがない。今は、やれ名誉毀損だの
 行き過ぎだのマスコミに叩かれますから。乗せてもらえますか?
 その高級車に?」

ファミレスで話せる内容でもないと車に乗せろと間島が言う
運転席に如月。助手席に柴崎
後部座席に、司と間島が坐った

「フィアンセと言うと、あの奇麗な女優さんですよね?」

「違う」

「うちの若い連中が、椎名さんの婚約発表を見て
 ガックリきてた記憶があります。私の勘違いでしたか?」

「勝手に発表したんだ。俺は認めてない」

「と、いうことは、貴方のフィアンセは別にいると?」

「そうだ」

「益々わかりませんな。海藤と道明寺さんのフィアンセは
 どのような繋がりがあるんです?」

「わからん。俺が知りてぇくらいだ」

「誘拐するメリットがないと言う事ですね?」

「質問をかえましょう。椎名さんのご子息が
 評判の良くない店に出入りしているのはご存知ですか?
 貴方は認めてなくても、世間的には椎名さんのご令嬢と
 婚約していると認識されてる
 そうなると彼は貴方の義兄になる。それなりの家柄同士
 噂話も耳に入ってるんじゃないですか?」

「そこまでわかってるならなぜ調べない」

「証拠がないんです。踏み込んでも何も出て来ない
 最近の売人は、どこにでもいそうなごく普通の人間
 おまけに、ヤバそうになると海外で薬抜き施設を
 斡旋したりするサービスの入れようでね
 まっ、それだけじゃないですけど、
 中々、本丸に辿り着けないって訳です
 この屋敷に鉛の弾をぶち込まれたって事は、威嚇です
 海藤が何かを知っている・・・・・」

コンコン。田中がウィンドガラスをノックしてきた

「ちょっと失礼します」

間島が一旦、車から降りた

「あのトラック、テンプラナンバーでした」

「なんだと!」

「おまけに、高速道路の路肩に放置されてたと
 通報があったみたいで確認に行ったら
 犬もろとも消えていたらしいんです」

間島は、ポケットからタバコを取り出すと火をつけた
ふたくち程、吸い込むとすぐ消した

「踏み込みますか?」

「そうだな」

間島がリアウィンドウをノックする
司は、パワーウィンドウを開けた

「道明寺さん、私が呼びに来るまで待っててもらえますか?」

「わかった」

間島がインターフォンを押しなにやら話している
しばらくすると、門が開いた

「司様・・・待ちましょう」

門が開くのが見えた途端、飛び出そうとした司を
柴崎が止めた
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