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鍾愛 117

モーター音と共に重厚感のある門扉が開いた
中に入って行ったのは間島と田中
出迎えたのは、ボディーガードの内野だった

「海藤さんにお会いしたい」

「体調が悪くて臥せっています」

「そうですか。なら、一之瀬さんは?」

「ご用件は何ですか?」

「人捜しをしてるんです
 こちらで見たと言う情報がありまして、
 中を見せてもらえませんか?」

「見せてやっても良いが何もなかったらどうする」

「市民の通報があれば対応するのが我々の仕事。ご協力願います」

偶然、屋敷の前で柴崎と会った時、他に誰か居なかったかと
訊いてきた。それが、司のフィアンセだろう
朝運び出された大きな段ボール箱の中に入れられていた
可能性がある。れならば、この屋敷には居ないはずだ
自分の詰めの甘さが招いたと事だと間島は、責任を感じていた

随分時間が経つのに間島は呼びに来ない
苛立ちを紛らわせる為、司は車から出て屋敷の周りを歩き出した
要塞のような屋敷の横は荒れ果てた更地
木製フェンスの一部は朽ち果て、錆びついた門は
南京錠がかけられていた
あれだけ厳重なセキュリティを施しているのに
真横の土地は無防備な状態なのを不信に思った司は
門扉を乗り越え、空き地に入ってみた
真横から海藤邸の二階の窓を確認にしようと
視線を上に向けながら膝丈まで伸びた雑草を
踏みつけるように歩いていた
するとコツンとつま先が引っかかり、躓きそうになる
視線を足元に移すと、コンクリートの蓋だった。
会所桝にしては大きすぎる
雑草を引っこ抜き、蓋を持ち上げようとしても重くて上がらない

「パンク修理の積載工具がトランクにあったよなぁ?
 そこに、バールが入ってたら持ってきてくれ」

隣の更地に居ると柴崎に連絡を入れた

「どうされました?」

「面白いもん見つけたからよぉ・・・」

コンクリートの蓋の僅かな隙間にバールをさし込み
テコの要領で持ち上げ開けてみると、梯子が下へと伸びていた

「私が行きます」

「いや、俺が行く」

日が暮れてない事が幸いして、明かりがなくても問題なく
降りて行けた。そこには、背の高い司でもぶつからない高さの通路が
広がっていた。5M行くか行かないかの距離に鉄の扉があって
その先は行けなかった

「なるほど・・・」

「どうでした?」

柴崎が心配して訊いてきた

「この更地、不自然だろ?地下で海藤邸に繋がってる
 カモフラージュでわざと手入れしてねぇんだ。戻るぞ」

そのまま車に戻るのかと思ったら、司は屋敷の門へと歩いてゆく

「待ちましょう」

「何でだ?」

「間島は、司様を巻き込まないために言ったんだと思います」

「巻き込まれるどころか、もう、巻き込まれたてんだよ!」
 
必死で引き止める柴崎の前に、間島と田中が屋敷から出て来た

「お待たせしました。残念ながら道明寺さんのフィアンセらしき人は
 いらっしゃいませんでした」

「よく捜したのか?」

「はい。全ての部屋を確かめました」

「隣の空き地と海藤邸は繋がってる。地下室はなかったか?」

「見る限り無かったですね。
 多分、ここにはいらっしゃらないと思ってます」

「そんな事は無いはずだ。中に入れろ。俺が捜す」

「闇雲に突っ走っても仕方ありません
 もう少し、時間を頂けませんか?」

説得してくれと言いたげに間島は、柴崎をチラリと見た

「司様、強引に押し切ると二度と中へ入れなくなります」

「とっとと策を練れ!」

怒り心頭で司は、車に乗り込んで行った

「先輩、今晩、時間ありますか?話したいことがあります」

間島が耳打ちしてきた

「大丈夫だ」

「後で連絡入れます」

「わかった」

間島は、司達が乗るメルセデスを見送りながら
また、タバコに火をつけていた

========

「ミスティで飲んで帰るから降ろせ。お前らは帰って良い」

機嫌が悪い司は、ふたりを追い払うように言い放つ
後は、任せたぞと如月に声をかけ
柴崎は、間島と待ち合わせの場所に向かった
昔は、よく通ってた、ひなびた居酒屋で落ち合う事になっていた
藍色の暖簾をくぐり店に入ると、すでに間島が座敷に坐っていた

「変わってないな・・・」

「そうでしょう?私も久しぶりに来ました」
 
席につくなりビールを注文した

「屋敷の中を田中と手分けして捜しましたが
 道明寺さんの婚約者も海藤も一之瀬もいませんでした
 入れなかった部屋が一つだけあります。書斎です
 道明寺さんが言ってた地下室は、書斎にあるんでしょう」
 
「いないって、どう言う事だ?」

「実は、昼過ぎに、犬を訓練に出すと
 迎えのトラックが来たんです。犬に紛れて
 大きな段ボール箱も運び込まれてました
 その時は何も思わなかったんですが
 あれは多分、道明寺さんの婚約者が
 押し込められてたんじゃないかと思ってます
 私のミスです。すみません。ナンバーを照合しましたが
 偽造ナンバーとわかりました」

申し訳なさそうに詫びた

「お前のせいじゃないさ」

「この間、マル被(容疑者)をガラヒキ(身柄を確保して連行すること )
 したんですけど、すんなり捕まると思ってたら
 ことのほか難航しまして。足取りが全く掴めなかったんです
 まるで神隠しに遭ったみたいに・・・
 取り調べでわかったんですが、そいつの話によると
 プロの逃がし屋ってのがいるらしいんです
 実態は把握出来てません。出来たら、あちらさんも商売に
 ならないでしょうから。トラックが来たときは
 海藤も一之瀬も屋敷にいたのは確認済みです
 夕方踏み込んだ時には、すでに居なかったか
 道明寺さんの話でピンと来ましたよ。書斎から地下室に繋がって
 そこから隣の空き地に出た。で、誰かが待ち構えていた
 三島組の奴らなのか、プロの逃がし屋なのかは、わかりません」

「海藤が姿をくらます理由がどこにある?」

「単純に考えれば、三島組の弱みを握ってたんでしょう
 あのクラブの事は、マークしてても、何も出て来ない
 まぁ、先輩がお察しのとおりです
 サツチョウ(警○庁)のお偉いさんが握りつぶしてる
 バカな話です。こっちは躍起になって追いかけてるのに
 同じ組織にいる人間が、逃がしてるんですから
 本末転倒ってやつです。先輩は、それが嫌になって
 辞めたんでしょ?」

間島はあおるようにジョッキービールを飲み干すと
おかわりと右手を挙げた

「毒ですよ。誰もが心の中に毒を持っている
 何かのきっかけで、猛毒になる
 私も、いつ、そうなってもおかしくないと思ってます
 紙一重のところで留まってる」

「みさちゃんは元気にしてるのか?
 愛美ちゃんも高校生くらいになったろ」

間島が、吐き出したい気持ちは痛いほどわかる
話の話題を変えようと家庭の話を振ってみた

「美紗子なら、10年前、娘を連れて実家に帰りました
 愛美が生まれて嬉しくて、家族のためにと思って
 ノンキャリ(ア)の私が出世するために
 実績積んで、必死で勉強して昇進試験受けて
 ある程度、生活が安定したかと思ったら、
 あなたは家庭をかえりみない仕事ばかりしている
 そう言われた時は、ショックでしたよ
 出世したら一番大事な者を失う事になるとは
 思っても見ませんでした。皮肉なもんです
 今は、月1、娘と会って解毒してるお陰で
 私も毒されず済んでませんけど、
 ミイラ取りがミイラになる怖さもある
 先輩なら、わかるでしょ?
 まぁ、でもこの仕事は、性に合ってると思ってます
 だからこそ、あのクラブは摘発したい・・・」

「ある程度の情報は摑んでるんだろ?」

「そこそこは・・・・かと言って、椎名をガサイレする
 理由が無い。だから、海藤が突破口になると思って
 張りついてたんです。なぜ、道明寺さんの婚約者を
 攫ったんでしょうね」

「悪いが、こっちは、お前を喜ばずネタはない」
 
「トラックは盗難車で中央自動車道で乗り換えた様で
 乗り捨ててありました」

「海藤が、そのトラックと合流する可能性もあるのか?」

「そうです。取りあえず、足取りを追うしかありません
 申し訳無いんですが、道明寺さんには、上手いこと言って
 時間稼ぎしといて下さい」

「いつまでも、引っ張れんぞ」

柴崎は、司の婚約の経緯を話して
協力出来る事はするから、早急に足取りを追って欲しいと頼んだ
司と間島が睨んだ通り、海藤と一之瀬は、地下室から
空き地に繋がる経路を使って気付かれないように
屋敷を脱出していた
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