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鍾愛 123

「つくしも一緒に海外に連れ出されてんじゃないだろうなぁ
 見つからないのは、おかしいだろう?」

「一緒ではないと思います
 海藤は、追われる身です。少人数の方が動きやすい
 それに女性がいると目立ちます。足手纏いにもなりかねません
 彼女を人質にしてもメリットがない」

「あんたの分析はいらね。知ってる事を話せよ
 俺が片っ端からあたるからよ」

「乗り換えた車の車種、どこのインターで降りたのか
 特定出来てません。聞き込みもしてるんですが
 情報が集まって来ないとこをみると、
 どこかに軟禁されてるんでしょうね」

「あんたらの本丸は、薬の需要元と供給源を解明する事だろうが
 俺には関係ねぇんだよ」

「失礼ですが、牧野さんとは、
 どこでお知り合いになられたのですか?」

「うちが建ててるビルの建築現場だ」

「面白い出逢いですね。そこからすぐ、お付き合いを?」

「まさか・・・あいつとは色々あったんだよ」

「みずきさんとの婚約は、当然、ご存知だということですね?」

「そうだ」

「ご両親は、牧野さんの事をどう思われてましたか?」

「邪魔だったろうな・・・あいつと俺はイトコ同士だ」

「えっ?と、言いますと・・・・」

「亡くなった叔父の娘だよ」

「血縁関係があるから結婚に反対されてた訳ですか・・」

「認めたくない女が生んだ娘だからだ」

「認知はされなかった」 

「そうだ。母親の戸籍に入った後、牧野家の養女になった」

「叔父さんは、知らなかったんですか?」

「あいつの実母が亡くなってから知ったらしい
 その叔父も、24年前に亡くなってる」

「死因は?」
 
「表向きは自死ってことになってる」

「裏の事情があると思ってらっしゃるんですね?」

「推測だけどよぉ」

「ご両親にしてみれば、表沙汰にはしたくはなかった」

「だろうな」

「この事件の鍵は、24年前の何かが、きっかけかも知れません
 全力をあげます。柴崎さんは?」

「今日は休みだ」

心労がたまっているのだろう
司の顔色は悪く頰までこけている
心中お察ししますなど、気休めの言葉は、この男には通用しない
海藤と司のフィアンセが絡んでいれば
公開捜査は危険だと判断し、地道な聞き込み捜査1本だった
司に朗報を届けて安心させたい気持ちはあっても
捜査は難航を極めていた

「お邪魔しました」と会釈して退席した

==========

「何だか複雑な事情が絡んでますよね」

「1本吸わせろ。お前の試験も兼ねてる」

「毒吸引ですか。言うと思ってました」

道明寺HDから少し歩くとビルの谷間にオアシスのような
こじんまりとした公園がある
聞き取り調査の真髄を田中に叩き込むため、いつもこうして
反省会のような時間を設けていた
禁煙パイポを咥えポケットに手を突っ込み、
肩で風を切って歩く間島の後ろ姿に、
アレじゃヤバい筋と間違えられるよなぁと、
田中は、ひとりごちていた

丁度いい木陰を見つけた間島は、腰を下ろしタバコに火をつけて
ポケットから、小銭を取り出し田中に手渡した
自販機で、缶コーヒーを買ってこいと言う意味だった

「いただきます」

「おう」

「気がついた事はあったか?」

戻って来た田中に、訊いてきた
田中は、缶コーヒーをひとくち飲んだあと
書き込んだ手帳を広げてみた

「あの社長と秘書は怪しいですね」

「どんなふうに?」

「どんなって、約束があるって、とっとと退席したでしょ?
 あれは、余計なことを言わない為ですよ」

「余計な事って何だ?」

「資金元の話になった時、口ごもったのは
 ヤバいルートから引っ張っぱろうと思ってたんじゃないかと」

田中は自信満々に答えた

「それ以外は?」

「へっ?それ以外ですか・・・無いです」

「俺が秘書の山崎と話してた事、覚えてるか?」

「喫煙ルームあるかどうかって話してましたよね」

「ハァーっ・・・・全く・・・お前は・・・・」

「勿体ぶらないで教えて下さいよ」

「売買に使われてたクラブのオーナーの話をしてたろ?
 表向きのオーナーの名前はマスコミに公表されたが
 本当の経営者の名前は伏せられてる
 名前は、加藤清。それを知ってた。それだけじゃない
 清と聞けば、たいがいは、男だと思うよな
 きよしでなく、きよ。紛らわしいが女だ
 どうして、秘書の山崎が、そこまで知ってる?」

「風の噂でって言ってましたよね?」

「奴らは、情報を漏らさないようにするもんだ
 風の噂程度なのに、核心部分をついてるじゃねぇーか」

「ああぁぁぁぁ!そうだ!そうですよね!
 って事は、あの社長と秘書も怪しいって事か!」

「わからんけどな」

間島は、わざとタバコを落とした
歩き方に特徴のある男が居たと言う証言を確かめるためだった
山崎がそうなら、靴裏が不自然にすり減っているだろうと
考えたからだ。まさか、靴を見せてくれとは言えない
言ったところで気付かれれば証拠隠滅される恐れもある
タバコを吸いたかったのもあるが、警戒されず間近で
山崎の靴を見るための手段として使ったのだ
残念ながら、山崎の靴は真新しく靴底も減っていなかった

「ふぅぅぅーっ」と、間島がタバコの煙を吐くと
キラキラ射し込んでいる木漏れ日の中にモヤとなって
溶け込んでいった
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