鍾愛 32

休日の都内は、渋滞もなくスムーズに流れていた
司は、ずっと窓の外を見たままで無言だった
信号待ちで、停まっていると、
ぞろぞろと人がわき出てくる場所があった
椿が、何かイベントでもしてるのかしらと呟くと
フリーマーケットだと思いますと運転手が返した

掘り出し物でも、見つけたのか、両手にいくつも袋をぶら下げて
歩いている女。小さな子供の手を引く父親らしき男
女子高生かと想像がつく騒がしいグループ
何気ない日常の風景とは、こう言うものなのか?
結局、自分は、何一つ持ってないのかも知れないと走り出した
車の中から、賑わう人波を見つめていた

「姉ちゃん、幸せか?」

「なによ、急に・・・・
 恵まれてるとは思うけど、心が満たされているかと
 聞かれれば、答えられないかもね」
「でも、みんなそうじゃない?全てが満たされてる人なんて
 いないでしょ・・・・どうしてそんな事、聞くの?」

「何で、あんなになるまで働いてんだ・・・」

「誰のこと?」

「手荒れに効くハンドクリームとかあんのか?」

「尿素剤配合とか、ビタミン系とか保湿効果が高いとか
 色々あるわよ」

「痛いのか?」

「あんた、なに言ってんの?」

「どこで売ってんだ?」

「ドラッグストアでも、コスメコーナーでも売ってるわよ」

「どこでもいい、ドラッグストアがあったら停めてくれ」

「かしこまりました」

運転手に告げると、じっと外を見たままで
椿が話しかけても返事すらしない
発展途上の彼女の話しを聞いてから、司の様子がおかしい
機嫌が良いと思えば、不機嫌だったり、恋の病かしら?
それなら、気が変わらないうちに、まとめちゃった方が
良さそうだと、プレゼントなら、ドラッグストアより
デパートで買った方が女の子は喜ぶわよと、アドバイスしたのに
どこでもいいと、ツレナイ返事が返ってきた

==================

「この先に、ドラッグストアがございます」

運転手が、デパートでなく
ドラッグストアで良いのかと確かめるように声をかけてきた

「姉ちゃんも、付き合ってくれ。なに買っていいか、らかんねぇから」
 

「いいわよ」

スゥー

メルセデスが静かに停まる
大丈夫、ここで待ってて下さる?
ドアを開けなくても良いと椿が、運転手に告げると外に出た

フォーマルウェアを着た、美男美女の姉弟が店内に入ると
買い物客が振り返って見るほど目立っている
はじめて入ったドラッグストアは、
主力商品に派手なポップが添えてあり
ハンドクリームも、すぐに見つけることが出来た

「このあたりね。ハンドクリームは」

椿が立ち止まって、商品を手に取った
思っていたより充実してたラインナップで
中には、スマホ、タブレット用ハンドクリームなるものも置かれていて、
面白いから買って帰ると椿が手に持ち、何点か効果がありそうなクリームを購入した

いったい、誰の為に買ったのか?邸の帰り道に立ち寄ったのは
つくしのおんぼろアパートだった
運転手に、ドアノブに掛けてくるように頼んで、
司は車内で待っていた
発展途上の相手である、お嬢さまの屋敷に行くのかと
思い込んでいた椿は、古びたアパートの住人が誰だか気になり
司に聞いてみた

「どなたのお家?」

「仕事で付き合いがある奴だよ」と、言葉を濁した

コンコンコンコン

司と入れ違いで、つくしが帰ってきた

階段をのぼって行くと、ドアノブになにかが
ぶら下がっているのが見える
何これ?と、ビニールの手提げ袋を覗くと、
何種類かのハンドクリームと、保湿手袋が入っていた。
誰が届けてくれたのか、すぐにわかった、つくしは、バッグから
スマホを取り出してみたものの、電話をかける勇気がなかった

カチャカチャ

バタン

靴を脱いで、ベッドに腰掛けると、
ひとつずつ、ハンドクリームを手に取っていた
もしかしたら、メモが入っているのでは?と探してみても
見つからない。
汚れて、カサカサに荒れた手に、何でキスしたんだろ?
可哀想に見えたのか?それとも・・・
そんなはずない。あたしなんかに・・あるわけない。そんな事
司と話がしたい。声がききたい
トレッキングシューズのお礼もまだ言えてない
何度も、司の番号を表示しては、オフにするを繰り返して
意を決して、タップした

RRRRRRRR

RRRRRRRR

長い間、呼び出したのに、司は出なかった

=================

「司、鳴ってるわよ」

何度もコールする相手が、つくしだと知って
わざと出なかった。椿が傍にいると話辛い
邸に戻って、自室のドアを開けると、
ポケットからスマホを取り出して、かけ直していた

RRRRRRRRRR

RRRRRRRRRR

「俺だ」

「あの・・・ありがとうございます
 スニーカーとハンドクリームまで頂いて」

「家か?」

「そうです」

「足は、大丈夫なのか?」

「はい」

「明日から、忙しくなる。来週は、会えるかどうかわかんねぇ」

まるで、恋人同士のような会話に、つくしがポッと頬を染めた

「今から会うか?めかしてこなくて良いから普段着で来いよ」

====================

「出かけるの?」


椿が、リビングのドアから顔を覗かせて聞いてきた

「晩メシは、いらねぇから」


お洒落な司にしては珍しく
邸で過ごす様なラフなコーディネートで出かけて行った
つくしの事を考えて、彼なりの気遣いだった
黒のデニムに、司に買って貰った
ピンクのトレッキングシューズを履いき
キャメルのダウンジャケットを羽織った、つくしがアパートの近くで待っていた
目の前に停まったのは、運転手がいない、司のプライベートな車
今まで、女を乗せたことは一度もなかった

ウィーン

パワーウインドーを下げて、乗れよとつくしに声をかけた

バタン

あまいコロンの香りがする
助手席に座ると荒れた手を隠すように丸めていた

「どうする。映画でも観に行くか?
 それとも行きたいところがあるか?」

「へっ?」

まるでデートだと、つくしは、ドキドキしていた

「水族館に行きたい。カピバラさんがいるとこ」


運転しながら、チラリとつくしに、視線を向けた

「なんだそれ?」

「知らないんですか?カピバラ?」

「知るか!」

段々、いつもの偉そうな司になってきて、クスっと笑った

「何だよ」

「映画で、良いです」

「水族館に行きてぇんだろ。連れてってやるよ」

「ありがとうございます。昨日は、ごめんなさい」


今しか言えないと思った、つくしは、もじもじしながら、
お礼とお詫びを伝えてきた


==============

ここからは、拍手コメントお礼となります


こめまるさま

こんばんは
お気遣い頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
ざーーーっと書いてしまうので
後で読み返すと、変!変!変だぁーーーって箇所が多々出てきて
申し訳ございません

最後まで、お付き合い頂けたら幸いです!


=======

HNさま

こんばんは!

うっ!アイタタタタタ

バレてたのねぇーーーー(・_・;)


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鍾愛 31

コツコツコツコツ

解体するなら、中に入る必要もないのに
なぜか気になり入って行った

つくしは、いつも通り、バイトに来ていたが
ゆっこがインフルエンザに感染してしまい
急遽、一人で全ての業務をこなさなければならなかった
通常11時で終える仕事も、残業確定
家に居ると、余計な事を考えてしまう
稼げるし、一石二鳥だと、どこまでもポジティブだった

4階から仕事にとりかかり、最後のモップかけ、
1階の廊下で作業をしていたら
コツコツコツコツと靴音が響いているのが聴こえた
入居してるテナントは、ほぼオフィスとして使用している
週末は休み。休日出勤のサラリーマンがたまにやって来るが
つくしの業務と入れ違いの事が多かった

「やだ。もしかして、お化け?」

真っ昼間から堂々と出てくるってあるのか?

コツコツコツコツ段々、靴音が大きくなってきている
つくしは、モップの柄をギュッと握りしめて、ゴクリと息を飲んだ
誰か来る!

「あっ・・・」

数秒間見つめ合うふたり

「何やってんだ」

「なにって、仕事です」

「ここで働いてるのか?」

「週末だけのバイトです。何か、ご用ですか?」

「ちょっとな」

まさか、司だとは思いもよらず、
短い会話を交わした後、つくしは恥ずかしさから目を伏せた

コツコツ・・

司は、モップの柄をギュッと握りしめたまま
立ち尽くしている、つくしの目の前まえまで行くと
左手をほどき、指先を優しく握り引き寄せると
手の甲にキスをした
驚いた、つくしは、指先を引っこ抜くようにして
後ろに隠してしまった

司は、踵を返すと何も言わずに、玄関扉に向かって歩いてゆく

ギィィィィ

司が出て行き、揺れる玄関扉を、つくしは、しばらくの間、見つめていた

バタン

ビルから出て来て、待たせていた車の後部座席に乗り込んだ司に
椿が話しかけてきた

「用は済んだの?」

「ハァー」

返事は、深いため息だけ
気がつかなかった。何度も一緒に食事しているのに、
つくしの手があれほど荒れ、カサカサになっていることを
痛々しくなって、思わずキスせずにはいられなかった
椿には、黙ったままの司の横顔が、哀しんでいるように映っていた


20180218175126a9f.jpg

イラスト提供すてらさん

昨日、更新するはずが、出来ずに、申し訳ございませんm(_ _)m
書けたら、随時アップしていきたいと思っております
最後まで、お付き合い頂けたら幸いです

===============

ここかからは、拍手コメントお礼となります

HNさま

おはようございます

うふふふふふ。いい線、ついてます。
そうです。そこです! にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
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鍾愛 30

つくしは、ベッドから引き抜いた毛布を
赤ん坊のおくるみのように身体に巻きつけて座っていた
冷え込む部屋で、何度も吐息を吐いては自分の取った行動を
後悔して、最悪、最低だわ。あたしって・・と、ひとりごとを呟く
玄関に、ちょこんと置かれた、ピンクのトレッキングシューズを見つめながら
司が、どんな気持ちで選んでくれたのか?
素直に、ごめんなさいと伝えたいのに、怖くて電話出来ずにいた

================

司は、タクシーで邸まで帰って来ると、一直線に自室に歩いて行った

バタン

ベッドにうつ伏せに倒れ込み、殺風景なつくしの部屋を
思いだしていた
あまりにも自分の置かれている環境とは違いすぎて
戸惑いを隠せなかった
俺は、あの女に同情しているのか?モヤモヤした気持ちが
どこから来るのかわからなかった
面倒くさいと思いながらも、気になってしまう

コンコン

司の帰宅を知って、椿が部屋のドアをノックする

「入ってもいい?」

「ああ」

カチャ

「デートじゃなかったの?」

「なんか用か?」

ベッドに倒れ込んだまま、無愛想な返事をする

「明日のお墓参り何時にする?」

「10時ぐらいで良いんじゃねぇの?」

「どこか具合でも悪いの?」

「別に・・・疲れてっから出てってくれよ」

外から帰ってきたかと思えば着替えもせず、ベッドに
倒れ込んで起きて来ない司を心配して声をかけたのに
迷惑そうな態度を見せる司に、二度目の思春期かしら?
あんなんじゃ、発展途上の彼女にも逃げられるわよねと
深いため息をついて出て行った

バタン

「わかんねぇ!わかんねぇ!わかんねぇ!」

大声で叫びながら起き上がると、傍にあった空のグラスを
思い切り壁に投げつけた

ガシャン

くそっ。俺はいったい誰に腹が立ってんだ?
あの女にか?自分自身にか?
このざわめく気持ちはなんなんだ・・・・わかんねぇ・・・

グラスが割れる音に足を止た椿がふり返る

「やっぱり思春期到来!大荒れだわ
 しばらく、そっとしといた方が良さそうね」

廊下の掃除をしていたメイドに、坊ちゃんには気をつけてと
ひと声かけて、肩をすくめた

=====================
司は、ベッドに身体を沈めたまま静かに目を閉じた
今まで、生きてきた中で、一番楽しかった想い出は、叔父である望と
過ごした時間だった
庭で、タンポポの綿毛を飛ばしたり、
汚いと言って決して許してもらえなかった砂遊びも
望となら一緒出来た
蝉取りをすれば、いるべき場所に居るからこそ
生きる価値があって美しいんだと、せっかく虫かごに入れたのに
最後は、夏の青空に放すように言われた
叱ってくれたのも、優しく抱きしめてくれたのも、
遊んでくれたのも、望だった

椿が、望が生きていたら、この家も変わっていたのかも知れないと
言っていたが、道明寺家ではなく、自分が一番、変わっていただろう
と、思っていた
冷たくなった望と対面した時、哀しみに歪んだ顔が
今でも脳裏に焼きついて離れない
大人になって、叔父が死を選んだ事が理解できるようになった時
全て、この家のせいなのだと復讐に似た気持ちを
抱くようになっていた

野良犬の血などいらぬ、由緒正しい血統書付きの血でなければ
道明寺家に相応しくない。祖父が放ったこの言葉
アメリカナイゼーションを意識して影響されているのに
その思考は、どこまで行っても日本人だった

愛など信じてはいない。人は裏切り、煩悩にまみれている
悪し血は、自分の代で絶たなければならない
司が、結婚しない理由は、そこにあったのだ

突然現れた、つくしの存在は、
鍵のかかった心を解き放して自由にしてくれるかも知れない
そう思うのに、あの女も、自分を利用しようとしている
煩悩にまみれた人間にすぎない。と、疑心暗鬼になってくる
手を伸ばせば、救ってくれるのか・・・
なぜ、苛立たつのか?なぜ、あの女なんだ。なぜ、気になるのか?
わからなかった

====================
翌朝、椿と叔父の墓参りに出かける前、司は庭に出ていた
高価な花より、道端に咲く可憐な花を愛していた望の為に
花ばさみを手に、庭に咲く寒椿の枝を
花が落ちないように気を付けながら切ると英字新聞に包んだ
寒椿を手に、淡い水色の冬の空を見上げてから
椿が待つ車の後部座席へ乗り込んだ
================
田園風景が広がる郊外
自然公園と間違えられる広大な敷地は
道明寺家の為の、道明寺一族だけの墓地だった
司は、どんなに忙しくても月命日になると必ずこの地を訪れていた
墓守を任せられた使用人達によって
常にキレイに掃除され、絶やすことなく花が供えられている
司は、持ってきた寒椿を置いてあった花瓶挿すと
墓前に手を合わせた

死して尚、道明寺家に縛られてるなんて・・・
心の中で呟くと立ち上がり後ろへ下がって、椿と入れ替わった
代々の当主も同じ場所に眠っているのに、参るのは
望の墓だけだった
椿が他の墓前も、お参りしようと言うのに、
用はもう済んだと車が待つ門の前まで歩いてってしまった

帰りの車内で、椿が話しかけてきた

「叔父様に、何を話してたの?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

ウインドーガラスに肘あて、頬杖をつく司は黙ったままだった

「いっけん、寄るとこがあるけど良いか?」

「良いわよ」

時間が出来たついでに、買収予定のビルの下見をするため
車を回すように運転手に告げた

スゥー

停まった場所は、駅近の4階建ての雑居ビルの前
車から降りて、ビルの玄関扉を開けると中に入ってゆく
敷地は広くないが、立地条件の良さで、このビルに目をつけていた
買収には違いないが、資金繰りが悪化したオーナーに
返済出来ないのを承知で融資話を持ちかけ、
言わば乗っ取る形で、安く手に入れ、更地にした後、
高値で売却するつもりだった。
そこは、つくしが週末バイトをする雑居ビルとも知らずに


==============

時間が出来たら、もう1話アップしまーす! にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
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鍾愛 29

本日は、2話アップしております

=================
司が呼ぶ声が聞こえているのかいないのか
振り返ることもなく、雑踏の中を走ってゆく
慣れないハイヒールのお陰で、思うように走れないつくしは
マンホールに踵を取られて、転んでしまった
過ぎゆく人は、誰ひとり声をかけてはくれない
司が選んだセンスの良いワンピースを着て、
マンホールの隙間に入り込んでしまったヒールをしゃがんで引っ張っている姿は、滑稽に違いない

司は、突然消えたつくしの姿を探していた
ゆっくりと身体を一回転させながら辺りを見渡す
どこ行っちまった?さっきまでいたのに、見失ったか?
ふと視線を戻すと、人並みが何かを避けるように
ふたてに分かれている。そっと近付くと、つくしが、しゃがみ込んで
ハイヒールを引っ張っている
声をかけても、反発するだろうと思い、黙って様子を見ていた

ポコ

ドン

踵が抜けるのと同時、つくしは尻餅をついて
力なさげに立ち上がると、スカートに付いた砂埃を手で払い
下を向いたまま、ヒールに足を入れると歩き出した
司は、一定の距離を保ちながら、後を追う
吸い寄せられるように向かったのは、人気のない公園だった
フラフラとトイレに駆け込み、しばらくすると中から
むせび泣く声が外まで聴こえてくる。
事情を知らない人なら、公衆トイレから泣く女の声がきこえれば
腰を抜かす程のホラーかも知れない

どうするか?辺りに誰も居ないとは言え
男である司が堂々女子トイレに入る訳にはいかない
待つしかないかと少し離れたベンチに腰を落ち着けて
様子を伺っていた

泣き声は段々大きくなっいき、そこまで傷つけてしまったのか?
と、複雑な気持ちになっていた
これまで、女の家に送り迎えする事もなければ
相手に時間を合わす事もなかった。
ましてや、一方的に機嫌を損ねた女の後を追いかけるなど
馬鹿らしいだけで、別れを告げる手間が省けたと清々していたのに
言い訳をしたくて、つくしを追いかけていた

ふぅーん ふぅーん ズルズル

中から、鼻をかむ音が聞こえてきて、しばらくすると
つくしが泣きはらした顔をして出てきていた
司は、腹がたつより、可笑しくなって、聞こえないように
口元を手で押さえると吹きだすのを我慢していた

ズルズル

テッシュで押さえながら何度も鼻をすする
まさか司が追いかけてきて、傍にいるとは思ってもみなかった
つくしは、聞き覚えのある声に顔をあげた

「逃げんじゃねぇよ。手間取らせやがって」
「ぐちゃぐちゃの顔で見るな。顔を洗って来い」

ハッとして、再びトイレに駆け込み鏡に映る姿は
目をこすったせいで、アイメイクが落ちて、こめかみ辺りまで
ぼかしが入り、目の周りは真っ黒なパンダ状態
テッシュで押さえてまくった鼻先は、真っ赤っか
司に言われなければ、この顔で歩いてたのか?と、ひやりとした
つくしが、手洗い場で念入りに顔を洗っている間
司は、スマホを取り出し、どこかに連絡したあと
調べものをしていた
待つこと数十分。スッピンで出てきたつくしは
司をガン無視して通り過ぎようとしたところで、
ガシッと手首を掴まれた

「もうすぐタクシーが来るから待ってろ」

今日は、夜まで、つくしと過ごすつもりで運転手を先に帰していた

「離して」

抵抗するも、司に、しっかり押さえ込まれていて動けない
10分程すると、タクシーがやって来て、無理やり押し込まれる
○○ビルまで行ってくれと行き先を告げると、タクシーが走り出した
司は、何も話しかけてこない。
後部座席のシートは、見えない線でも引かれているようで
ふたりの間は、互いの領域には踏み込まない感があった

あたしが、何で怒ったか、この男は、ちっともわかってないんだ
また、どこかに連れてって着せ替え人形にでもするつもりか?
つくしは、窓の外を見ながら、司に見せつけるように
不機嫌さをあらわにしていた

タクシーは、司が告げたビルの近くで停まった
駐車スペースがなく、ここで待っててくれと運転手に伝えると
司が先に降りて、エスコートするように
左手を伸ばしてきたのに、つくしは、払いのけるようにして
降りていた。なのに、支えるように腰に手を回すと
目的のビルまで、つくしのペースに合わせて歩いてくれる
エレベーターに乗り、着いた場所は、アウトドアと登山用品の専門店

「ここに、座ってろ」

店内の長方形のソファーに、つくしを座らせると
ショップスタッフを呼ぶ

「ハイカットで、軽くて一番歩きやすいトレッキングシューズを
 持ってきてくれ」

どう言うつもりなのか?司の意図がまったくわからない
ショップスタッフが、いくつかのシューズを持ってきた
お勧めはこれですと、ハイカットでミッドソールは
軽量で衝撃吸収性に優れたE.V.A.を採用しておりまして
地面から足裏への突き上げを軽減して膝の負担を減らしますと
説明している

「足を出せ」と、司に言われるまま、ヒールを脱いで

トレッキングシューズを履いてみる

「つま先はキツくないか?歩きにくくないか?」

「大丈夫です」

「これにする」とスタッフに告げた

ピンクがベースになった、可愛らしいトレッキングシューズを
履いて、ショップを出た途端、司が手を繋いできた
ブランド物のワンピースに、足元はトレッキングシューズ
おまけに顔は、スッピン。すれ違う人に、上から下まで視線を落とされて、
凄いコーディネートだと笑われている気がした

待たせてあったタクシーに再び乗り込み、次に着いた場所は
つくしのアパートだった
司が先に降りると、いきなりお姫様抱っこされた

「恥ずかしいからおろして下さい」

つくしの言葉を無視して
アパートの階段をコンコンと音を立ててあがってゆく

「鍵をよこせ」

言われるままごそごそと、バッグから鍵を取り出して司に渡すと
つくしを抱いたまま器用に鍵を開け、靴を脱ぎ中に入った
ワンルームの狭い部屋。ベッドに腰掛けさせると
トレッキングシューズを脱がせた

「今日は、ゆっくりしとけ
 痛みが引かなければ、明日、必ず病院へ行けよ」

脱がせたトレッキングシューズを玄関に置き

「俺は、お前をどこへ連れてっても恥ずかしくはない」

バタン

背中越しに、ひと言呟いて部屋を出て行った
何てことしたんだ。司は、知っていた。なぜ、つくしが機嫌を損ねたかも
足を捻挫してる事も・・・・
だから、足首をホールドして固定できるシューズを
わざわざ買ってくれたんだ
あんなみっともない格好の自分と手を繋いで、ジロジロと見られても
気にするどころか、心配してくれていたのに
ぽろぽろととめどもなく涙が溢れてくる
司は、つくしに、話したところで、言い訳にしか聞こえないと思い
分かりやすいように伝えてきたのだった

=============

HNさま

こんにちは

スギにヒノキ、ブタクサに稲と年中花粉に撃沈されてます
わんこと暮らしてるのに、犬アレルギーもあります

乙女!私も遠い昔の記憶になりました
すでに、ヲサーンに進化しております
こないだ、事務所に置いてあるタイムカードを押そうと思ったら
満員で、通路に置いてある椅子に座ってたんです。それを見た上司がひと言
「競輪場にいる、オッサンみたいやなぁ」って言われちゃいました(笑

トホホホホ にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
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鍾愛 28

リリリリリーン
RRRRRRRRRRR

リリリリリーン
RRRRRRRRRRR

RRRRRRRRRRR

あれ?目覚まし止めたのに何で鳴ってんのよ?
ガバッと飛び起きて時計を見たら5時を指していた
この音、携帯だ!誰よ、こんな時間に!
ぷんぷんしながら、スマホを手に取ってみたら
表示されていたのは(道明寺)と言う文字
こんな時間になによと、不機嫌に電話にでていた

「はよー。起きたか」

「5分前に起きてます」

「嘘つけ、寝起きの声してんぞ」

「何なんですか?朝っぱらから」

また、厄介な事を言い出すのではないかと身がまえながら
フリースに袖を通して、携帯を持ち替え
ダウンベストに手を伸ばす

昨日は、遅くまで付き合わせてしまったと
寝坊しないか気になっていた司は、モーニングコールを入れた

「起きてたんなら、もう用は済んだ」

「あの、その為に電話くれたんですか?」

「他に何があんだよ?」

電話越しに聴こえてくる無愛想な独特の低音ボイス
この声で、あまい言葉を囁かれたら
落ちない女などいないのではないか?
恋愛体質でないと自覚していたのに、
簡単に恋に落ちてしまうものなんだと司の声に聴き入っていた
つくしの気持ちとは裏腹に
電話越しに話をする司は、自分の事などまるで、
興味を持ってないのがわかる

「寝るなよ!」と、怒鳴る司の声で、現実に引き戻されていた

「あとでな。気をつけて行って来い」

気をつけて行って来いだなんて
何で、そんな優しい言葉をかけるの
突然現れた魅力的な男と毎日会っていれば
誰だって好きになるに決まってる
気のない素振りをしていても、司に、心ときめいていた
苦しい。恋って痛いもんなんだと、はじめて知った
やばっ!感傷に浸りすぎて、いつもより30分以上も過ぎている
幸い、昨日の美食が消化しきれず胃に留まってくれているお陰で
朝ごはん抜きでも大丈夫そう。
顔を洗って、歯を磨いて、身支度をして
誰も居ない部屋に向かって、いってきますと声をかけてから
部屋を出て行った

=============

司はまだベッドの中にいた。つくしに電話をかけたあと
目が冴えて、二度寝出来そうもないとスマホで
食べている 痩せる 原因とキーワードを打ち込んでみた
出てきたのは、貧血、ホルモンの病気、妊娠、自律神経の乱れ以外に
何項目かヒットした
まさか妊娠は、ないだろう。やっぱり病気なのか?
無理やりでも、病院に連れて行くべきなのか?
あの女のことだ。言っても病院なんて行かないだろうな
一緒に人間ドックで診てもらうか?と誘う方がいいのか?
手のかかる奴だと、つくしの事を考えていた

===============

「牧野ちゃん、おはよ」

「おはようございます」

ゆっこと1週間ぶりに会うなり、痩せた?と聞かれて
ちょっと色々あり過ぎてと言葉を濁していた
1階にある収納庫から、メンテナンスカートを取り出して
4階建ての雑居ビルの掃除の準備をする
玄関フロアー、廊下、階段、エレベーターの中、トイレ
郊外にあるショッピングモールに比べたら掃除する場所は少ないとは言え、
掃除機以外は、全て手作業。床を磨く、ポリッシャーもなく
ひたすら大きなモップで拭いていく肉体労働だった

「そうそう、ビルのオーナーが変わるかも知れないんだって
 社長が言ってたよ。そうなれば、ここも取り壊すかもね」

「ええ?だったら、あたし達の仕事は?」

「なくなるんじゃない?」

「それ、困ります!」

「だよねぇ。お金が欲しくて働いてんのにさ
 まっ、社長が、違うとこに行って貰うとは話してたけど
 ここみたいに、午前中で終わんないかもよ」

「あたし、2階のトイレ掃除にいってきます!」

「了解!」

雑談しながら準備したあと、ゆっこと分かれて、
トイレ掃除にとりかかる
あんな、おんぼろアパートに住んで、こんな姿みたら
あいつ、どう思うんだろ?悲壮感が漂いすぎて、
眉をひそめるんだろうな・・・
今の仕事も、プライドを持ってやってるのに
恋するつくしは、バレたくない。こんな姿を見られたくないと
思うようになっていた
朝7時から始まったバイトも11時で終わる。
仕事が終わって1時間ほど、屋上で、ゆっこと、
くだらないトークタイムが楽しみだったのに、
司との約束が気になって仕方が無い
普通の男なら、ゆっこに話して、恋のお悩み相談に
乗ってもらってるところだが、相手は、普通であって普通でない男
実ることがない片想いは相談ではなく慰めてもらう事になる
黙っておくほうがいいと胸の中に閉じ込めた

「牧野ちゃん、聞いてる?さっきから上の空だけど」

「えっ?何でしたっけ?」

仕事が終わって、いつものように屋上でひと息ついていた
司の事を考えていて、ゆっこの話は耳に入ってこず
生返事ばかり繰り返すつくしが心配になって、顔を覗き込んできた

「大丈夫ですよ。ちょっと寝不足で・・・」

「なら、今日は、早めに解散するか」

フゥーっとタバコの煙を吐きながら、ゆっこが言った

「お疲れさまでした!」

「また、明日ね!」

RRRRRRRRRR

RRRRRRRRRR

「もしもし俺だ。終わったのか?」

「はい」

「今、どこだ?迎えに行く」

「夜じゃないんですか?」

「行くとこあるから、今から会おうぜ」

「まだ、出先で、一度家に戻りたいんですけど」

「わかった。2時でどうだ?」

「わかりました。宜しくお願いします」

帰ってシャワーも浴びたいし、メイクもしなきゃ
間に合うかな?。夜バイトの初月給が出たら自転車を買おう
駅まで徒歩30分は、やっぱりキツい

================
時間は、あっという間にたってしまうもんなんだ
いつもは、ゴロゴロ、ダラダラ過ごす至福の時間なのに
今日も、また、あいつと会う為にハードスケジュールになっている

スーゥ

約束通り、司がアパートまで迎えにきてくれた

バタン

シートに座ると、あまいコロンの香りが漂ってきた
スーツ姿でない彼も、やっぱり素敵で
あたしは、買って貰ったワンピースに、しっかりメイクを施して
目いっぱい背伸びして、お淑やかな振りをして、ぎこちなかった

「今から、買い物に行く」

「わかりました。あっ、今朝は、ありがとうございました」

「遅刻しなかったのか?」

「はい。どうにか」

司は、無口だ。余計なお喋りをすると叱られそうで
外ならなんとか当たり障りのない会話で
やり過ごせるのに、密室の車内は苦手だった。
だからいつも、ぼんやり外を見るしかなかった
都内をしばらく走ってついたのは、ブランドショップの前
司が先に降りて、エスコートするように左手を出してきた
長い指先に手を乗せると優しく握ってくれた

「いらっしゃいませ。おまちしておりました」

有名ブランドショップに足を踏み入れるのは二度目
彼と一緒にいると、何処へ行ってもVIP待遇で迎え入れられる

「パーティーで着るドレスがまだだったよな
 お前を一流の女にしてやるよ」

何気ないひと言が、つくしにはカチンときた

「一流って何ですか?外見のことですか?
 それなら、そう言う方を誘って下さい。あたしは無理です
 一流にはなれません」

司を睨みつけるように言うと出ていてしまった

「待てよ!なに怒ってんだ」

自分は、司に似合う女じゃない。だから似合うように
外見だけでも、見れるようになれ言われてるようで
わかっていても惨めだった
恋心を抱いてウキウキして、バッかみたい
悔しい涙なのか?叶わぬ恋の諦めの涙なのか
泣きながら、街中を逃げるように走ってゆく

「待てよ!待てったら」

司が、必死で、つくしを追いかけてくる
女は、みんな着飾る事が好きで、
似合うドレスを買ってやりたかっただけなのに
でも、それは、自分の自己満足に過ぎなかったのか?
つくしの喜ぶ顔が見たかった。ただそれだけなのに
泣きながら出て行く、つくしを追いかけずにはいられなかった


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HNさま

こんばんは

先週は、こちらも地域によっては雪が積もってたみたいです
日が長くなってきましたよ。
少し前まで、夕方の5時は暗かったのに
今は、明るいですからね
早朝出勤は暗い!道路が凍結してます
暗闇の中、わんこの散歩してる人が多くてびっくりです

花粉症の時期は、ドロッとした目やにで、
朝起きたら、瞼が塞がって開かない!
おまけに、パンパンに腫れてしまうので、外に出るのが恥ずかしい
鼻水も知らぬ間に出てたり春先は、けっこう悲惨です
それも年々、酷くなってきてます(涙

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